DVD-R 1枚の DVD-Video には何時間のビデオを入れられるか

DVD-R 1枚の容量は,4700000000 バイトである(細かくは違うのかもしれないが,基礎にする数字としてはこれでいいはず)。これを一般に 4.7 GB といっている。しかし,2進法をベースにした表記をするという慣例に従うなら,これは 4.38 GB だろうし(4700000000÷1024÷1024÷1024 = 4.377),4482 MB だろう(4700000000÷1024÷1024 = 4482 )。
このあたり,ソフトの種類によって数値の表記上の計算方法がまちまちだったりするので,混乱する。たとえば,4.589 GB としているものがあるが,これは,KB のレベルにするときにだけ2進法ベースで計算して得られる数値(4700000000÷1024 = 4589844)を,そこからは10進法ベースで計算しているのだろうか。よくわからない。
しかしまあともかく,MB で表記する場合には,4482 MB とするのが,いちばん真っ当ではないかと思われる。

TMPGEnc DVD Author 1.5 では1枚分の容量として 4438 MB を表示する。これは,映像・音声データのほかにメニューなどのデータも入ることその他を考慮して多少マージンをとった数値だとのことなので,これに依拠して,この容量の中に何分の映像を入れられるか,場合に分けて考えてみよう。

[目次]


標準画質の場合

DVD-Video は元々,ハリウッドの映画産業界との話し合いで,133分までの映画を1枚のディスクに収められることが要求仕様だったという。
現在個人ユーザーが利用できる片面1層の DVD-R に133 分の映像を収めるとすると,ビットレートは次のようになる。

まず,映像と音声の合計。
1枚の DVD-R の容量 4438 MB を 133 で割って1分あたりのデータ量を求めると,33.37 MB。ビットに換算すると 266.96 Mb。
さらに1秒あたりのデータ量を求めるため 60 で割ると,4.45 という数値が得られる。単位系の統一の面でちょっと自信がないが,まあだいたい,4,450 kbps ということだ。

ここから,仮に音声部分に 384 kbps を使うとすると,映像部分のビットレートは 4066 kbps ということになる。
つまり,大雑把にいって,2時間強の映像を入れるなら,映像のビットレートは 4 Mbps ということだ。
これは,MPEG ファイルの中で「中の下の上」くらいの画質だと思う。

[To Top]

最高画質の場合

では,最高画質では何分まで入るのか。
DVD-Video の規格上,最大の総ビットレートは 10.08 Mbps とされている。そしてこの中には映像・音声以外のデータのビットレートも含まれるので,TMPGEnc DVD Author 1.5 では安全のためのマージンを若干とって,映像と音声合わせて最大 9.8 Mbps を上限としている。そこで,ここでもこれを上限として計算する。
音声部分を無圧縮のリニア PCM にして 音声データに 1536 kbps を使う場合だとその分を差し引いて映像ビットレートは 8264 kbps。
音声を Dolby Digital(AC-3) の最高音質である 448 kbps にした場合は映像部分に 9352 kbps を割り当てられる。
これは,MPEG ファイルの中で,「上の上の下」くらいの画質である(ちなみに,「上の上の中」はアナログ放送を D-VHS 録画した映像,「上の上の上」はデジタルハイビジョン放送を D-VHS 録画した映像)。

では,計算しよう。
DVD-R 1枚の容量は 4438 MB = 35504 Mb。
35504 Mb / 9.8 Mbps = 3622 s であるから,3622秒入れられるということになる。
ちょうど1時間くらいだ。

[To Top]

できるだけ詰め込みたい場合

画質は少々落ちてもいいから,詰め込みたいという場合はどうか。

MPEG-2 の場合

MPEG-2 で作る DVD は,映像ビットレート 1 Mbps から可能だったはずだ。しかし,2 Mbps を切るとプレイヤーがうまく再生できない可能性がある,と読んだこともある。

安全を期して 映像 2 Mbps で作るとすると,次のようになる。
まず,このレートだと,フレームサイズは 352 × 480 が精一杯。いっそのこと 352 × 240 にしたほうがよいかもしれない。
これでも,動きが特に速い映像でなければ,VHS の3倍画質くらいでは見られるはずだ。 映像 2000 kbps に,音声が 224 kbps として,合計 2224 kbps。DVD-R の容量をこれで割ると,15964 秒,つまり,266 分ということになる。
2 Mbps で,4 時間 26 分 が収められるわけだ。

ドラマの1クールを2枚の DVD に入れようと思うと,もうすこし画質を落とすことになる。1枚に 312 分入れたい(各回正味47分で6回,1回は30分拡大)ので,1秒あたり合計 1896 kbps,音声に 192 kbps 割くとすれば映像部分は約 1700 kbps となる。

Video CD 規格の MPEG-1 の場合

DVD-Video は,MPEG-1 からでも作れる。
MPEG-1 の場合,DVD-Video に入れる映像ビットレートは,最大 1.856 Mbps とされている。
しかし,このレートなら,MPEG-2 にしたほうがいいくらいだし,また,MPEG-1 はだいたい 1.5 Mbps くらいでの再生を想定して作られている規格であるため,ビットレートの高い MPEG-1 はプレイヤーがちゃんと再生してくれないおそれもある。
だから,Video CD 規格と同じ 1150 kbps で作るとすればどうなるか,を計算することにする。

その前に一口メモ。
DVD オーサリングソフトの中には,DVD-Video は MPEG-2 からしか作れないと決めつけていて,MPEG-1 を受け付けないものもある。MPEG-1 がダメなのではないが,音声のサンプリングレートが 48 KHz でないとダメだとするものもある(Video CD 規格 に準拠して作った MPEG-1 ファイルのサンプリングレートは 44.1 KHz となる)。
TMPGEnc DVD Author 1.5 は,MPEG-1 からも DVD-Video が作れるし,また音声が 48 KHz 以外のものも受け付けて,48 KHz にして再エンコードしてくれる。ただし,MPEG-1 ファイルのフレームサイズは 352 × 240 でなければならない。また,音声の再エンコードにはけっこう時間がかかるので,DVD-Video にするつもりなら,MPEG-1 の場合でも音声は 48 KHz にしておこう(TMPGEnc の Video CD 規格用のテンプレート をそこだけ変更して使えばいい)。

さて計算。
音声を 192 kbps にするとして,合計 1342 kbps。DVD-R の容量をこれで割ると,26456 秒,つまり,440 分となる。
Video CD 規格の MPEG-1 で,7 時間 20 分の映像を収めることができるのである。

低ビットレートの MPEG-1 の場合

画質をさらに犠牲にしてもいいから,1クールのドラマを1枚の DVD-Video にしたい,と考えるとどうなるか。
ドラマは各回正味が 47 分弱。11回放映で,初回と最終回が各30分の拡大スペシャルだとして,総放映時間は 577 分だ。
DVD-R の容量を 577 で割って,1分あたりのデータ量は 61532 kb,1秒あたりにして 1025 kb である。
ここから,音声を 192 kbps にするとしてその分を引くと,833 kbps という ことになる。
映像を 830 kbps くらいにすれば,1クールが1枚に入るわけである。

[To Top]
All About スタイルストア




[「デジタルビデオ編集の基礎知識」トップページを新しいウィンドウで開く]