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市販 DVD から作る

(2004年02月09日全部修正)

市販の DVD-Video からデータをリッピングすることが広く行われている。
そういうことはやめよう。
コピープロテクトを外してコピーするのは,私的使用のための複製でも違法(著作権侵害)だからね。

だいたい,市販の DVD-Video なんて,いつでもレンタルできるんだから,そんなの複製しても意味ないでしょ。
以前だと DVD のコピーはけっこう難しい技だったから,達成感を味わうためにやる,みたいな意義も多少あったかもしれない。
けれど,今はごく簡単にできてしまうから,その意味もない。時間のムダだよ。

ということを書きたいがためにこのページを作ったのだけれど,DVD-Video の私的複製が違法(著作権侵害)かどうかについて,違う議論があるということを最近知ったので,その議論について紹介しておこう。
ページのタイトルと全然違った話になるけど,勘弁ね。

[目次]


コピープロテクトを外せば私的使用のための複製でも違法

民事責任を問われうる

まず大前提として,コピープロテクトを外してコピーすれば,私的使用のための複製でも著作権侵害だ,ということははっきりしていて,誰も違うことは言わない。
著作権法30条1項は,無許諾の複製が著作権侵害にならない例外的行為のひとつとして,私的使用目的の複製を挙げる規定だが,そこでは2つの場合が除外されている。「例外の例外」が定められているわけだ。
その「例外の例外」の2番目として挙げられているのが,技術的保護手段を回避することで可能にした複製である。その事情を知りつつ複製すれば,著作権侵害となるとされている(同条2号)。

権利者から損害賠償を請求される可能性があるのだ。

ただし,このことと混同しないようにしたいことが2つある。

犯罪ではない

ひとつは,コピープロテクトを外した私的使用目的コピーは,犯罪ではないということ。
著作権法119条は著作権侵害一般を犯罪とし,「3年以下の懲役または300万円以下の罰金に処する」としている。
だが,私的使用目的の複製については,「例外の例外」の場合も含めて,科罰対象から除かれているのだ。同条1号は,科罰対象を次のように規定している。

著作権……を侵害した者(第30条第1項……に定める私的使用の目的をもつて自ら著作物……の複製を行つた者……を除く)

読んでのとおり,技術的保護手段を回避したかどうかを問うことなく,私的使用目的なら除外されている。
この理由については,文化庁の立法担当者の書いた本に次のように説明されている(『著作権法・不正競争防止法改正解説』〔有斐閣・1999年〕95頁)

ただし刑事罰については,私的使用のために行う個々の複製行為に,刑事罰を科すほどの違法性があるとまではいえないことから,改正法は,公衆用自動複製機器を用いて行う複製の場合と同様に,行為者を刑事罰を科す対象から除外することにした(第119条第1号括弧書きの適用)

なお,コピーガードを外すための機器やソフトを不特定または多数の人に売ったり,不特定または多数の人のためにコピーガードを外すサービスをするのは,刑事罰の対象となる(著作権法120条の2)
このようなことをすると著作権者が大きな被害を受ける危険があるから,刑事罰をもってでも抑制しようとしているわけだ。

コピーガード外しは,他の例外規定に対する「例外」にはならない

それからもうひとつ。
著作権法には,私的使用目的のほかにもいくつかの,著作物の無許諾利用行為が著作権侵害とならない場合が挙げられている。
それらについては,技術的保護手段を回避して行うことを「例外の例外」として違法化する文言はない。つまり回避してもいい。
ちょっと考えにくいが,たとえば,著作権法36条が定める試験問題にするための複製は,技術的保護手段を回避して行ったとしても,責任を問われないのである。

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CSS はコピープロテクトではない?

以上,ここまでは,はっきりしている。
はっきりしないのは,市販の DVD-Video をパソコンでコピーする行為にはコピープロテクト外しが伴っていることになるのかどうか,という点だ。

一般に,DVD-Video ではコピー防止のために,以下の3つの技術が使われているとされる。

最後のマクロビジョンはここでの話にさしあたり関係ない。

最初の CGMS は,CGMS-A(アナログ信号用の CGMS)のことだろうか。
だとすれば,これは,映像の中に入っている信号にデジタル録画機器が反応して,信号が「コピー不可」の場合には録画が中止される,というものだから,パソコンでデータとして扱う場合には効かない。
デジタル版の CGMS-D という機能も「ある」とよく書かれているが,まだ規格ができていないのか,あるいは,パソコンには関係ない話なのだろうか。
よくわからないが,とにかく,パソコンでのコピーの防止には CGMS は役立ってないものと思われる。

なお,DVD-Video に使われているコピー防止技術は上の3つに限られるわけではない。
たとえば,DVD ドライブに入れた 市販 DVD-Video からエクスプローラでファイルをコピーしようとすると何やらエラーメッセージが出てコピーが中断される。ここにも何かコピー防止技術がかかっているようだ。
しかし,DVD 再生ソフトを起動すると,なぜかエクスプローラでのコピーが可能になる。
これは信号を除去したり改変したりしたわけじゃなくって,ただソフトを起動しただけなのだから,技術的保護手段の回避には当たらないだろう。このコピー防止技術は,パソコンのように鈍い機器には通用しないわけだ。

実際上,パソコンによる市販 DVD-Video のコピー防止に一番役立っているのは,真ん中の CSS である。
しかし,これが技術的保護手段ではない,というのがなぜか通説らしい。

CSS は,著作権が規律対象とする利用行為(複製など)をコントロールする技術ではなくて,著作物へのアクセスをコントロールする技術だから,著作権法2条20号に定められている「技術的保護手段」に当たらない,というのである。

たしかに,CSS(Content Scrambling System) は,コピーをできなくする技術ではない。データを暗号化したときの鍵がないと再生できないようにしているからコピーしてもムダだよ,という技術である。
そのため,技術的保護手段回避による私的複製を侵害行為とする規定を導入した法改正が行われたとき,その議論の過程で,CSS はアクセスコントロール技術として整理されたらしい。
上掲の立法担当者の本にも,次のように書かれている(90頁)

暗号化システムには,…… DVD で使われている CSS(Content Scramble System)など,様々なものがあるが,これらは専用のデコーダや正規の機器を用いないと著作物等の視聴を行えないようにするものである。このような視聴を制限する手段は「アクセス・コントロール」と呼ばれるが,現行著作権法においては,著作物を単に視聴する行為は著作権等の対象となっていない(自由に行うことができる)ため,技術的保護手段には該当しないことになるのである。

しかし,たとえばリージョンコードのようなものなら,アクセス・コントロールであってコピー防止技術ではないといわれて納得もするが,CSS はまさにコピー防止のために導入された技術じゃないだろうか。
利用技術が暗号化であっても,それが「著作権……を侵害する行為〔無許諾複製――引用者注〕の防止又は抑止……をする手段」に該当しないとする決め手になるとはいえないんじゃないだろうか。

うーん,よくわからない。
この問題は,また今度考えよう。

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