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テレビ番組をデジタル録画するようになると,VHS テープで録画していた頃よりさらに,録ったまま見ない番組が増えた。
ドラマなど,1クール分全部録ったが見ていない,なんてこともある。
ハードディスクに置いたままだと容量を圧迫するので,とりあえず DVD-Video にして DVD-R に焼く。しかし見る時間がなく,DVD-R ばかりが溜まっていく。
通勤時間に電車の中で見たりできないかな,と思っていた。
それに必要なのは,いわゆる「ポータブルAVプレイヤー」(あるいはポータブル・マルチメディア・プレイヤー(PMP))というものだ。
車内がすこし混雑していて,本や雑誌を広げるには足りないが,これを利用するくらいのスペースはある,という状況は珍しくない。あるいは,読みかけの本や雑誌がないとか,どうも集中力がなくて文字を追えない,というときもある。
そんなときに使いたい,と考えたのだ。
そう考え始めたのは 2004 年春頃のこと。その頃の代表的な製品は,次の2つだった。
しかし,a.は MPEG-4 系の動画しか再生できない。DVD-Video にすることを前提に,MPEG-2 形式で録画している私にとっては,それを MPEG-4 に変換するという手間が必要になってしまう。
しかも取扱店が少なく,値段が高かった。ハードディスク容量が 20GB の AV320 で 83,000 円以上した(2004年7月4日現在)。
他方,b.は MPEG-2 が再生できるが,逆に MPEG-4 の再生はできない。また動画再生専用で,音楽などの再生はできない。
VAIO のオプション品という位置づけの製品なので,VAIO で録ったテレビ番組を見るために必要な機能だけ持っています,というわけだ。
ここまで機能が少ないものを,カバンに入れて持ち歩くわけにはいかない。
というわけで,この2つは買うことができなかった。
そこに発表されたのが,SONY の HMP-A1 である。
これなら,MPEG 1/2/4 の動画と MP3/WAV の音声に対応しているので,かなり使える。
今後この種の製品は,もっと高機能でもっと安いのがいろいろ出てくるだろうからそれを待つべきだ,買うのはまだ早い,とも考えた。
だから,発売初日(2004 年 6 月 26 日)に買うなんてことは,さすがにしなかった。
しかし,今後発売される製品は MPEG-2 を切り捨ててくることも考えられる。
この手の製品は,録画機能を持っているわけではないから,パソコンからの転送を前提にしている。そうすると,メーカーとしても,「ユーザーは,より小さい容量で済む MPEG-4 系のファイルにしているだろう,余計な機能は切って小ささや安さを追求したほうが売れる」と判断する可能性が高い。
逆に,MPEG-2 対応の場合,HDD/DVD レコーダーからデータを転送できたり,チューナーから直接録画する機能を持っていたり,という方向にいくだろう。そういう機能は私には要らないのだが,機能が増える分だけ値段が上がるか,よくても HMP-A1 と同じ,ということになりそうだ。
だとすれば,HMP-A1 をいま買っておいて損はない。
ということで,発売日翌々日の 6 月 28 日,購入してしまった。
池袋のビックカメラ本店,62,790 円。10%のポイント還元があるので正味 56,511 円。ただしメーカーの1年保証に上乗せする3年保証をポイント5%分(3.140円相当)でつけたので,結局,総額としてはほぼ 60,000 円というところだった。
本や雑誌以外では,発売からこんなに短期間しか経たないうちに物を買うのは,初めてのことだった。
それだけ,期待は大きかった。
では実際使ってみてどうだったか。
一言でいえば,期待は裏切られなかった。
けっこう快適だ。電車の友としてはほとんど不満がない。
ファームウェアや付属ソフトのアップデートもマメに行われ,不満だったこともだんだん解消されていくし(たとえば,最初は15秒ジャンプ機能だけがあって15秒バック機能はなかったが,あるときバック機能も追加された)。
外形寸法は,ヨコ 129.6 mm,タテ 75.6 mm,厚さ 22 mm。シャツの胸ポケットになんとか入る。
ただしちょっと重いので,型くずれする。
まあしかしこの重さはしかたないだろう。あんまり軽くて弱い部品使われていても困るし。
パソコンとは,USB ケーブルで繋ぐ。USB 2.0 対応だ。
HMP-A1 を単なる外付けの 20 GB ハードディスクとして使うなら,ただ繋いで,エクスプローラでファイルをコピー・アンド・ペーストすればいい。
けれども,そうやって送ったファイルは,HMP-A1 で再生することはできない。
再生できるかたちで転送するには,動画・静止画については HMP Image Transfer Manager,音声については musicmatch JUKEBOX という専用ソフトを使う。
musicmatch JUKEBOX は,いまひとつ使い勝手がよくない。
HMP Image Transfer Manager のほうは,機能が単純なだけに,使い方も簡単。
上の図の例では,合計 5 つ,11.2 GB のファイルを指定している。この転送は約 20 分で完了した。1 GB 当たり 2 分弱というところだ。もうすこし細かくいえば,約 76 Mbps ということになる。
USB 2.0 の理論値である 480 Mbps と比較しても,そこそこ好成績といえるだろう。
ただし,これは転送時に変換を行う必要がないファイルの場合の話。
WMV 形式や AVI 形式のデータは,変換しながら転送する。
また,MPEG-4 に対応しているとはいうものの,付属ソフトで変換した MPEG-4 でないといけないみたいで,MPEG-4 でも変換にかかる場合が少なくない。(2005/08/27訂正:付属ソフトで変換したものでなくても,MPEG-4 の標準的な規格のものなら OK のようだ。ただし MPEG-4派生CodecのAVIファイルは――MPEG-4ではないから当然だが――ダメ)
これらの変換処理は,相当に時間がかかる。実用レベルとはちょっといえないようだ。
このような,無変換で済まないデータは,HMP-A1 に転送しようとは思わないほうがいいし,転送する場合は,あらかじめ変換を済ませておくことをお勧めする。
初期バージョンの HMP Image Transfer Manager では,たしか,あらかじめ変換しておくということはできなかった。しかし,現在のバージョンでは,それが可能だ。
変換後は,一覧の「状態」欄の表示が「未転送」から「変換済」に変わっているはずだ。
こうなっていれば,転送実行時には変換処理が要らないので,転送は短時間で完了する。
ちなみに,変換だけを行った場合,変換されたデータは,変換先フォルダとして指定されているフォルダに保存される。変換先フォルダは,[MENU−設定]で表示される設定ダイアログの動画転送タブで指定する。
変換先フォルダには,たとえば mpg1E.tmp のような,一見したところ動画ファイルとは思えない名前で一時ファイルとして保存されるが,実体は上で指定したとおりの MPEG ファイルである。どこか別のところにコピーして,指定に合わせて拡張子を変えてやれば,普通の動画ファイルとして使うこともできる。
この一時ファイルは,元のファイルが転送完了したり,転送ファイル一覧から削除されたりすると,消去される。
なお,HMP-A1 のユーザーは,SONY のサイトから,Nero Recode 2 CE をダウンロードして使用できる。これを使えば,DVD-Video を HMP-A1 に無変換転送・再生できる形式の MPEG-4 に変換することが可能だ。
といっても,スクランブルのかかっている市販 DVD は変換できない。とりあえず DVD-Video にしたけど見る時間がないテレビ番組などを,HMP-A1 で見られるように再度変換する,というようなときに使えるものだ。
HMP-A1 以降,さまざまなポータブル AV プレイヤーが発売された。
そのどれもが,MPEG-2 再生機能を切り捨てている。だから私にとっては,今のところ,HMP-A1 を発売直後に買ったのは正解だったわけだ。
しかし,より魅力的な製品が出てこないのは,寂しくもある。
現在発売されている製品は,対応している動画・音声フォーマットで特徴づけられる。だから,ほとんど迷うことはない。
自分が主にどんな動画・音声を視聴するのかさえ決まれば,それで決まりだ。というか,決められてしまう。
次のようになる(括弧内の金額は,2005年2月12日時点での,価格.COMの最安価格)。
主な用途 | 選択すべき機種 |
---|---|
MPEG-2 を見たい人 | HMP-A1(43,632 円)しかないでしょう。 |
XviD や DivX で映像を貯め込んでいる人 | アイリバー の PMP-120(容量 20 GB。42,840 円)またはPMP-140(容量 40 GB。52,290 円)がいい。 外観は凹凸がありすぎて好きじゃない。持ちたくない。しかし,人によっては,掴みやすくていいと思うのかもしれない。 |
世界は Microsoft のものだから,いずれ世の中 WMV だらけになると読んでいる人 | Creative Zen PMC(45,995 円)をどうぞ。 動画をみんな WMV に変換してしまうなんて,時間がかかってしかたがないのではないかと思うのだが,我慢すれば使えるのだろうか。 現状では,WMV でテレビ録画する一部の人か,音楽中心に利用する人にだけ勧める。 バッテリが長持ち(公称7時間)するし,見た目がちょっとクールなだけに,惜しい。 |
テレビから直接録画したい人 | 今後はこの方向の製品が増えていくのだろう。 しかし今のところ,実用レベルのものはあまりないようだ。予算が許すなら,今でも ARCHOS の Cinema To Go(AV320,AV340)(83,300 円,92,600 円)がやはりよさそう。 |
自分で撮影した映像を中心に見る人 |
セイコーエプソンの P-2000(52,579 円)。 これは,電車の中などで見るにはちょっと重すぎるし,録画したテレビ番組を観るのには不適当だろう。 しかし,動画デジカメやメモリカード記録型デジタルカメラを使って自分でのデータを蓄積させて見るためになら,容量も大きいしピッタリだろう。電池の交換ができるのも高ポイント。 |
後続製品は,その後さらに出てきた。MPEG-2 再生可能なものもいくつかある。それらはどうだろうか。
結論から言うと,パソコンで録画したテレビ番組を視聴する目的のためには,HMP-A1 を凌ぐものは現行製品ではまだない。
しかし,まもなく登場しそうだ。