本を必要としている人は少なくなった。
他方,本を出すのは簡単になった。
需要が減って供給が増えているのだから,それを商売にしている出版社や書店が不振なのは当たり前ですね。
いずれは,本は商売のタネにならなくなるのかも。
すくなくとも,硬い内容の本は商売にならないんじゃないだろうか。
ひょっとして商売になるとしても,その商売は単なる在庫管理業。再販制や参入障壁に守られながら,たいした貢献もしていないのに価格をつりあげる,寄生的で消費者利益に反する業種になりそうだ。
そんな自嘲的な空気が,専門書出版社の編集部を覆っているように思う。
(03/04追記)
朝日新聞読書欄「著者に会いたい」のコーナーで,『職業としての翻訳』(毎日新聞社,1,600円)の著者,鈴木主税さんも,直接は翻訳出版業界についてであるけれど,次のように言っている(記事の署名は深津純子)。
書き終えて一番感じたのは,業界全体が「素人の時代」になってしまったということだ。かつては,無名の人間を発掘し,育てようとする出版人が何人もいた。だがいまは,可能性より安全性重視。結果を金で買えばいいというサラリーマン編集者も珍しくない。「技能をきっちり認識してくれる人間がいなければ,プロの仕事は成立しません」。
もしそんな商売になるのなら,たしかに,編集者が活躍する余地はない。
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けれども,私は,専門書の編集者が要らなくなるとは思っていない。
ただ,その存在意義が残るかどうかは,「読者のエージェント」としての役割を果たせるかどうかにかかっている。(つづく)