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リーガ・エスパニョーラ最終節のチケットは,Main Event 社のWebサイトで,カテゴリー1のPremiumクラスのを予約した。
同社では,「試合を完璧な角度から見られる間違いなくベストな座席」を保証する商品として,Premiumクラスというのを提供している。
とはいえ,要は,カテゴリー1にもコーナー付近の席はありうるので,そうではなくサイドラインを保証しますよ,という程度のものだと理解したほうがよさそうだ。
そして,同じカテゴリー1の中でも,少し値段が高い。
最終節のバルサ対バジャドリー戦のそれは,182.00ユーロだった。
もし最終節前に優勝が決まって,消化試合になってしまったら,開催日直前でもきっと余裕で定価で買えるだろう。
カテゴリー1の定価はいくらなのかよくわからないが(あとでわかったところでは,121.00ユーロらしい),プレミアム価格を払う価値があるかどうかは,迷いどころだった。
でも結局,チャンピオンズリーグ決勝のほうはチケットが入手できるかどうかすら怪しいのだから,リーガ最終節だけでも確実によく見られる席を確保しようと思い,このクラスのものの購入を決定。
あわせて,旅行を中止にする可能性も考え,キャンセルを可能にするオプション(20ユーロ)も購入した。
合計202.00ユーロの支払い。
この予約をしたのが3月8日のこと。
その後,バルサは快進撃を続け,2位レアル・マドリーもぴったりと着いてきて,両者に優勝の可能性が残ったまま最終節を迎えた。
バルサは勝ちか引き分けで優勝という状況だった。
目論見どおりに,最終節でリーガ優勝を決めるバルサを見ることができる。
対戦相手は,最終節に負ければ2部に降格してしまうレアル・バジャドリー。
実力的には大差があるうえにホームなのだからバルサが負けることはないだろう。
しかし,残留がかかっているのだから,バジャドリーも相当に気合いが入るはず。
いいゲームが期待できる。
チケット現物は,バルセロナのMain Event社の店舗に受け取りに行くことにした。
日本に送ってもらうと送料もけっこう高いようだし,現地のホテルに届けてもらうのでも10ユーロだというから,余計な費用は避けたいと思った。
それに,こちらから受け取りに行くのが最も確実だと考えた。
しかし,これが失敗だったかもしれない。
バルセロナに着いて2日目(実質的には初日)の5月15日,何はともあれチケット確保しなきゃと,この店(TICKETS FC)に行った。
店の場所と営業時間については,4月28日にメールで連絡を受けていた。
ランブラス通りの脇にあるわかりやすいところにはいっていた。
店の入口には,最終節のバルサのチケットにつき,「完売」の張り紙。
へへへ,僕はもう確保してるよーん,と心で呟きながら,窓口で引換書類を呈示した。
しかし店のお姉さんは,しばらく探したあとで,「まだ届いていない。明日また来て」と言う。
おかしいな,と思いながら,まあそんなものか,と自分を納得させて,店を出た。
そして翌日。
あまり早いと,まだ届いていないと言われる可能性もあると考えて,13時半ころに店を再訪する。
しかし,やはり見つからないと言う。
まだ届いていないとかそういうことではない。無いのだ。
全身から冷や汗が噴き出す。
今日はゲーム当日だ。今からでは,業者が慌てて再手配をしても,間に合わないだろう。
昨日のうちにもっと大騒ぎして再手配をするよう要求しておくべきだった。どうしてしなかったんだ,バカ!
だけどそもそも,明日になれば届くだろうなんて,簡単に答えた店員さんは,何の根拠があってそんなことを言ったのだ? 訴えてやりたい!
予約のときにやりとりをしたMain Event社の日本人スタッフN氏に電話をするが,つながらない。
しかたなく,メールを送り,いったんホテルに帰って待つことにする。
この会社はまっとうな業者と信じていたが,お金の持ち逃げをする悪徳業者だったのか?
ついにこの私も,チケット詐欺に引っかかってしまったか!?
ゲームを観られないとしたら,ただバルセロナ観光に来ただけってことか。
観光だけのためにしては,下準備はあまりしてないぞ,どうしよう……。
良い席で確実に観られると思っていたリーグ最終節の観戦が,するりと手から逃れていく恐怖を味わった。
ホテルで待つこと30分だったか1時間だったか……。
N氏から電話がある。
「あった」と言う。
事情はよくわからないが,とにかく受け取るのが先だ。
急いで部屋を出て,店に向かった。
ホテルの最寄駅と店の最寄駅が,地下鉄2駅分しか離れていないというのは,こんなときには本当に助かる。
店でN氏から,チケットを受け取る。
封筒に仕分けするときに,誰のものかわからず宙に浮いてしまっていたらしい,というような説明を受けた気がするが,とにかくチケットを手にしたことで頭が一杯で,ほとんど理解できなかった。
スペイン人の仕事ってこんな感じなんですよ,ホントにすみません,と謝られて,お詫びとしてカンプノウ・ツアー招待券(定価なら17.00ユーロのはず)をもらい,ようやく落ち着いてくる。
こんなにハラハラして手に入れたので,かえって印象の強い観戦体験になってよかったかも。
カンプノウ行きのバスの出発までまだ時間があったので,もういちどホテルに戻って,支度を調えることにする。
部屋であらためてチケットを確認した。
これがそのチケット。 333番扉から入るブロックの,33列目の5番シートということになる。 |
333番ブロックとはこのあたり。 たしかに悪くない。 |
スタジアムは,地下鉄の駅からも近いところにあるが,Main Event社のお客さん用のバスに乗っていくことにした。
集合場所は,コロンブスの塔付近。
いろんなバスが次々にやってきて,お客さんを乗せていく。たぶん皆,カンプノウに行くサポーターたちだ。
出発予定時刻は17時だったはずだが,予定時刻を過ぎても私達のバスは来なかった。
写真左の,集合場所を示すプレートを持って立つのが,チケットオフィスの窓口で対応してくれたお姉さん。
こういう仕事もなさるんですねえ。お疲れさまです。
バスは17時13分に出発した。
出発から25分弱でスタジアムの駐車場へ。
とうとう来ました!
5番ゲートの外側付近から見たスタジアム(5月16日17時38分)。 |
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ゲートを入ったところ(5月16日17時46分)。 |
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プレートの一つ一つもしっかり見たかったが,気がはやって,駆け抜けた。 |
キックオフは19時の予定。
約1時間前に席に着く。 |
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18時29分。 天井(上の階の床)があるためスクリーンが見えないので,代わりにモニターがある。 このころピッチ上では選手たちが練習を。 |
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18時46分。 席がかなり埋まってきた。 |
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18時56分,私から見て左側,メインスタンドから見て右側。 |
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同じく18時56分,反対側。
だいたい埋まった。 |
そしてキックオフ。
ゲーム開始後,しばらくはバルサの選手の動きは硬かった。
何か変だった。
DFピケとGKバルデスの意思疎通もとれてなくて,いきなり絶体絶命のピンチを招くし,メッシも「まさか」というようなチャンスで外すし。
スタンドの雰囲気も何か変だった。
やはり,勝ちさえすれば文句なしに優勝決定で,しかも相手は降格目前の下位チームとなると,「変なことさえしなければ勝てる。変なことさえしなければ」という気持ちになって,つい「変なこと」を意識するものだから変なことしてしまうのだろうか。
バルサの選手のような超一流のアスリートの心理状態など,私には想像もできないにもかかわらず,そんな想像をしてしまった。
「これは何か起こるかもしれないぞ……」。バルサを応援しにきてはいるものの,あっさりと決着がついてしまってはつまらない,一波乱あったうえで勝って優勝,という展開を期待していた私は,心配しつつちょっと期待を膨らませた。
ところがその後の展開は,あっさりと決着がついた。
メッシはなかなかゴールは決められないもののキレキレの動きであちこちにメッシらしさを出し,ついにゲームを決定づける得点。
バジャドリーのモチベーションも相当に高かったはずなのだが,やはりあのスタジアムでは平常心で戦える状況ではなかったのだろうか。
キャパが9万人を超えるスタンドを埋め尽くした観客のほとんどがバルササポーターで,何かあるたびに大合唱,大歓声,大ブーイングをする。
同じスタンドにいる私でさえ鳥肌が立つくらいだったのだから,ピッチ上の選手たちがそれらに影響されずに自分の精神をコントロールするのは,無理だったのかもしれない。
大差となったおかげか,今シーズン限りでの移籍が濃厚なイブラヒモビッチやアンリ,それにケガあがりのイニエスタも出場して,見たかった選手を全部見られた。
緊迫感がなかった代わりに豪華な素晴らしい千秋楽だった。
満足! もう帰国しても悔いがないくらいだ。
まだこのあとチャンピオンズリーグの決勝が見られるなんて,信じられないくらいに幸せ。
ゲーム終了,歓喜の瞬間(20時45分ころ)。 ついにバルサのリーガ連覇が決定! 一方,バジャドリーにとっては,降格決定,絶望の瞬間だ。その辛さも,わかるよ。 |
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選手たちはいったん引き揚げた後,しばらくしてから(その間はバンドが出てきて音楽で場をつないでいた)再度現れて,セレモニー。
選手が一人一人挨拶をして,どこかで必ず笑いをとる。
多くの選手が挨拶の最後を「バルサ万歳!カタルーニャ万歳!」で(しかもたぶん,カタルーニャ語で)締めていた。 セレモニーは22時20分くらいまで続いた。 |
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来たときと同じバスに乗って,市内中心部まで戻る。
23時頃にはたぶんウニベルシタット駅くらいまで到達したのだと思うが,そのあたりで,騒ぎで渋滞してほとんど前に進めなくなった。
バスはもともとはカタルーニャ広場まで戻ることになっていたはずのところ,パセジ・ダ・グラシア駅手前付近でみんなをおろし,解散。
今日はドタバタしていたので,昼も夜もご飯を食べていない。食事のできる店を探す。
グラシア通りを上っていくとタパ・タパがある。手頃なバルなのだが,満員だった。
しかたなく更に歩いていく。そこに,光る建物があった。
カサ・バトリョだ。
昼間に見たときは毒々しい感じの建物が,今は高揚感も手伝ってか,神々しいほど綺麗。
このあと更に歩いたところに, TAPA i APATがあった。