デジタルテレビ放送時代の受信・再生・キャプチャ(2010年編)

(2010年02月07日追加)

アナログ地上波の停波予定日まで1年半を切った。
デジタル放送は,もう誰もが知っているように,録画して加工する行為を制限するように作られている。

CPRM対応の機器とメディアを使えば,保存することはできるが,そうした機器の編集機能は限られている(のだろうと思う。あまり使ったことはないのだけれど)
凝った編集は諦めるとしても,再生互換性の問題は見逃せない。安全なのは,DVD-Video にするか,MPEG-2 や MPEG-4 などのファイルにして保存することだが,それはできないようにしたい,というのが放送する側の希望だ。

自由に加工できる形式で保存したいと希望する側がとれる対応策について考えてみた。

[目次]


いわゆる「TS抜き」

完全に元と同じデータが保存できる

まず,デジタル放送のデータをコピーフリーな状態でパソコンに送ることのできる製品を使う方法。

そうした製品には,USB接続の friio とか,PCI接続の PT2 とかがある。
また,本来はコピーが不可能なように暗号化されたデータになるはずの製品でも,そのドライバにちょっと手を加えることで,コピーフリーなファイルとして保存されるようになるものもある。その嚆矢となったのが「自作パソコンで地上波デジタル放送をキャプチャ(Monster TV HDUS編)」で取り上げた,Monster TV HDUS だ。

これらは,送られてきたデータ(MPEG形式のトランスポートストリーム[TS])そのものをそのまま記録するわけなので,全く劣化がない(字幕データなどは保存されないから,データのすべてが記録されるわけではないが)

俗に「TS抜き」などと言われている。

面倒だし,地上波向け製品しかない

ただ,このやり方は,「怪しい製品に手を出す」感が否めない。Monster TV HDUS などは,製品本来の仕様は全く怪しくないが,ドライバを改変する行為が必要であるなど,やはり怪しい感じだ。
やり方も,いろんなソフトを組み合わせてインストールしたりしなければならなかったりして,そう簡単ではない。日常的に録画予約に使うには,ちょっとマニアックすぎる。
それに,これらの製品が受信できるのは,地上波デジタルだけ。BSデジタルや,ケーブルテレビで配信されている番組には,使えない。


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GV-D4VR なら,D端子入力でキャプチャできる

地上波以外で配信されるデジタル放送をハイビジョンでキャプチャしたければ,チューナーなどからから HDMI 端子か D端子(D3以上)から出力した映像信号をパソコンに取り込める製品が必要だ。
その類の製品のなかで,使えそうなのは,アイ・オー・データ製の GV-D4VR だ。

2009年12月,amazon で購入してみた。24,814 円だった。

CGMS-A に対応している

D 端子接続対応のキャプチャボード GV-D4VR は,映像をハードウェアで MPEG-2 にエンコードして,付属ソフトの「I-O DATA HD Video Capture」で取り込む製品。

入力された映像の CGMS-A 信号に反応し,コピー不可の映像はキャプチャができず,コピー回数制限のかかった映像の場合は暗号化された独自形式の動画ファイルとして保存される。この動画ファイルは,録画したパソコン上で,付属ソフトを使っての視聴しかできないシロモノだ。

設定を変えれば普通の MPEG ファイルが生成される

ところが,Windows の レジストリをちょっと変えると,CGMS-A 信号に反応しなくなり,どんな映像が入力されても,普通の MPEG ファイルとして保存されるようになる。

このやり方の場合,ドライバソフトやキャプチャソフトを改変するのでなく,Windows のレジストリをいじるだけだというところがミソだろう。
レジストリの変更がプログラムの書き換えに当たるとは言えないし,CGMS-A 信号に反応しないだけならば,コピーコントロールの信号を除去しているとも改変しているとも言えない。

近い将来,ハイビジョン映像を出力する製品には D端子を付けてはいけないということになるらしいが,それまでの間は,この方法でハイビジョン画質でのキャプチャができる。

HDMI 入力によるキャプチャのできる製品もあるらしいけど……。

これに対し,HDMI 出力した映像信号を,HDCP 除去可能に改造したある HDMI セレクタを通してコピーフリーにし,HDMI 端子接続に対応したキャプチャボードでパソコンに取り込むという方法もあるらしい。
この HDMI セレクタの改造はとても簡単で,機器内部の線を1本切るだけだそうだ。

これについては,HDCP の除去というのがどんなことを指すのかがよくわからないので,なんとも言えない。

HDCP の仕組みは,何かの信号を付加するようなものではないはずなので,「除去」ということの意味がまずわからない。
詳しいことは知らないが,HDCP は,認証された機器の間で,暗号化したデータと解読のための鍵をやりとりするという方式。そこから想像すると,上の HDMI セレクタ(改造後)は,上流の機器に対しては認証機器として振る舞ってデータの入った箱と鍵を受け取り,データを取り出したあとは認証機器の仮面を脱いで裸のデータを下流の機器に渡す,というような動作をするのだろう。

だとすれば,信号の除去や改変は行われていないので,私的複製であれば著作権侵害にはならないだろう。しかし,情報不足で,判断できない。
それに,HDMI 端子対応のまともなキャプチャボードは,HD RECS(トムソン・カノープス製)くらいしかないはず。
このボードは高価だし,Canopus HQ Codec というコーデックの AVI ファイルとして保存するもののようなので,MPEG-2 にするには更にもう一手間かかる。ちょっと面倒だ。

HDCP 制御されたままの HDMI 入力からコピーフリーなキャプチャをする製品もあるらしいが,どんなものやら……。

GV-D4VR が最強か

ということで,今のところはやはり GV-D4VR が最強だろう。
「TS抜き」と違い,いったんデコードされて映像信号になったものを再度エンコードするわけだから,エンコードするチップの性能しだいで記録される映像の質が左右されるが,この製品に使われているチップの「LibraENC」というのはなかなか良いようだ。

注意したいことが2つある。

  1. 他のキャプチャボードとの併用はうまくいかないらしい。
  2. レジストリを変更した場合,「I-O DATA HD Video Capture」が起動したまま,キャプチャしたファイルを操作しようとする(ファイルを選択する)と,パソコンが落ちる。ファイルを操作するときは,その前にこのソフトを終了させる(常駐も解除する)ことが必要。


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最も手軽な方法は

ハイビジョン画質は必要なのか

上に書いたように,GV-D4VR を使って,ハイビジョン画質で加工の自由な MPEG-2 ファイルを作ることができる。

しかし,ハイビジョン保存が本当に必要かどうか。

たしかに,スポーツ番組やステージ番組など,広範囲を画面にとらえた映像の場合は特に,ハイビジョン(HD)と標準画像(SD)の差ははっきりしている。HD を見慣れると,SD の粗さはちょっとせつない。
サッカーをしている選手の顔が判別できるかできないか。この差は大きいだろう。

でも,足りないところは想像で補えばいいとも言える。

ハイビジョンでない MPEG-2 のメリット

特別に重要な番組以外は,地デジのチューナーやケーブルテレビチューナーからビデオ(コンポジット)出力して,ハイビジョン対応していない従来のキャプチャボードでSD(720×480)の MPEG-2 として取り込むのが,結局はベストかもしれない。
そうやって取り込んだ SD の MPEG-2 は,扱いやすい。

加工自由なかたちで取り込める MPEG-2 キャプチャボード

いま発売されているキャプチャボードだと,デジタル放送をそのようにしてキャプチャしたファイルは独自形式に暗号化され,録画したのと同じパソコンでしか視聴できない。
「デジタル放送対応」という言葉は,そういう意味だ。
しかし昔の,CGMS-A 信号に反応しないキャプチャボードは,デジタル放送で CGMS-A 制御されていてもかまわず普通にキャプチャできてしまう。
その代表例がカノープス(現トムソン・カノープス)の MTV-2000や MTV-1000 だ。愛用している。
これに限らず,そういうボードが意外に多いらしい。

ここのサイトが非常に参考になる。

んー,やはり,CGMS-A に反応しないキャプチャボードの代表選手,MTV-2000/MTV-1000 をこれからも大事にしていこう。

って,これでは,「デジタルテレビ放送時代の受信・再生・キャプチャ(2004年編)」と同じ結論ではないか。

6年も経っているのに,ちっとも成長していない奴だなあ,と思われるだろうけれど,まあしかたがない。
6年経っても,デジタル放送録画用の使い勝手のよいパソコン周辺機器は,発売されていない(発売させてもらえない)ということなのだろうから。

周辺機器メーカーのライバル二社が手を組んでデジタルライフ推進協会などというものを立ち上げたのも,この「発売させてもらえない」状況をどうにかしなければいけない,という考えからだろう。
頑張ってほしい。


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