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私の家は,ケーブルテレビ会社のケーブル経由で地上波アナログ放送とBSアナログ放送を受信している。デジタル放送は受信していない。また,アナログ放送が完全になくなる日まで,これからもデジタル放送には移行しないつもりでいる(その理由については,「デジタルテレビ放送時代の受信・再生・キャプチャ >> デジタル放送になるとパソコンではキャプチャできない?」などをご参照ください)。
しかし,たまに,デジタル放送でしか受信できない番組の中に,DVD-Video 化して保存したいような,とても貴重な番組があったりする。
局側としても,なんとか受信者を増やしたいと思って,とっておきのコンテンツをそのように使ったりするのだ。
ある日,つれあいが,BS デジタルで放送されるある番組をデジタルデータ化して保存することはできないかと相談してきた。もう二度と目にすることのできない映像だというのだ。
つれあいの実家ではこの頃すでに BS デジタルが受信できる環境だったので,そこへ行けば,録画は問題なくできる。問題は,どういう経路でデジタル化するかだった。
VHS テープに録画して,それから「録画済みテープやテレビ放送(アナログ信号)からMPEGファイルを作る」に書いた手順で MPEG ファイルにしてもよいのだが,それだと,VHSで録画・再生する過程が挟まる分,かなり画質が落ちてしまう。
ビットストリーム録画までは望まないにしても,「特別番組」なので,少しでも良い画質で残したい。
どうすればよいのだろうか,と思っていたときに,非常に参考になったのが「裏ワザ! DVカメラ活用術 - 撮影だけじゃもったいない」という記事(海上忍さん執筆)。
デジタルビデオカメラ( DV カメラ)は,テレビやビデオデッキなどのビデオ端子(コンポジット端子)またはS端子と接続することにより,アナログ出力ができるし,逆にアナログ入力もたいていできる。つまり,DV カメラは miniDV テープを使ったビデオデッキにもなるわけだ。
ビデオデッキと比べると,予約録画ができない,miniDV テープの制限で2時間(80分テープをLPモードで使用)までしか録画できない,という弱点がある。しかし,「特別番組」録るのだから手間など惜しくはないし,幸い番組の時間も1時間50分弱で,テープに収まる。
録画したら,それは撮影した映像と同じことだから,それと同じ手順で,パソコンへの取り込み,編集(といっても不要部分のカット程度),AVI Type-2 形式での保存,MPEG-2 形式へのエンコード,DVD-Video へのオーサリング,をする。今回の番組はエンコードの際にアスペクト比の設定と画像配置方法をどうするか少し迷ったが,気をつけるべきことはそれくらいだった。
しかもこの方法には,もうひとつ利点がある(ようだ)。
それは,デジタル放送の CGMS-A 信号に反応しないらしいこと。
先日,つれあいが,また別のデジタル放送の番組を保存したいと言い出した。
上に書いた番組の録画は,2004年4月の「総コピーワンス化」前に行った。しかし今度は,その後のことだ。録画できない心配があった。
2004 年4月以降,デジタル放送の番組はすべて,CPRM 対応機器・メディアでのみコピーが1回可能,それ以外の機器ではデジタル録画不可にする CGMS-A 信号(コピーワンス信号)が入っている。DV カメラによる録画も,アナログ信号をデジタル信号に変換してテープに記録するわけだから,デジタル録画には違いない。しかも,CPRM 対応の デジタルビデオカメラや miniDV テープなんて聞いたことがない。そうだとすると,録画できないのではないか,と心配だったわけである。
しかし実際やってみると,なんの問題もなく録画できた。
そして,miniDV テープからのパソコンへの取り込み(再度のコピーということになる)も,MPEGへのエンコードも,DVD-Videoへのオーサリングも,まったく支障なく行えた。
上で紹介した「裏ワザ! DVカメラ活用術 - 撮影だけじゃもったいない」には,次のような記述がある。
DVカメラなどの映像デバイスの多くにはコピーガード検出機構が搭載されている。その種類にもよるが、コピーガード信号が検出されると映像が暗くなったり明るくなったりを繰り返す(マクロビジョン)、エラーメッセージが表示され録画が開始されない(CGMS-A)、といった症状が現れダビングに失敗する。
同様のことが書かれた本も見たことがある。
しかし,実際はできたのである。
念のため,ほぼすべてのチャンネルを試してみたが,やはり問題なく録画できる。
私のデジタルビデオカメラは 2003 年 9 月購入のもので,最新ではない。だから,現行機種でも可能とは保証できないが,たぶん大丈夫だろう。
上で紹介したのは,チューナーとデジタルビデオカメラを直接繋いで miniDV テープに記録する方法だ。
しかし,これより,チューナーからのビデオケーブルを外付け DV キャプチャユニットに繋ぎ,そこで DV-AVI 形式に変換して,それをデジタルビデオカメラに IEEE1394 で繋いで miniDV テープに記録するほうが,高画質で録れるらしい。
この方法の場合,何も,miniDV テープに記録する必然性はない。外付けキャプチャユニットから,IEEE1394 端子のあるパソコンに繋ぎ,ハードディスクに記録すればいいことだ。
ただし,ハードディスクに空きがあまりないとか,上に書いたような出張録画でパソコンがないとかいうときには,この方法が有効だ。
この方法のほうが高画質だということは,小寺信良ほか著『DVD & 動画ファイル 逆引き便利読本』(技術評論社・2004年)の39頁に書かれていた。
読んで,チューナーからデジタルビデオカメラに直接繋ぐより高画質になる理由がわからなかったので,質問を送った。そうしたら,外部結線がデジタル化できるので,ケーブルの品質に左右されることもなく,外部からのノイズの影響を受けにくいというメリットがあるとの返事をもらった。
結線で極力アナログ接点を減らしていくことに意味があるということらしい。
そのほか,DV キャプチャユニットのほうがデジタルビデオカメラより,DV にコンバートするチップの品質が良かったり,Locked Audio 機能によって音ズレが防止できたりする利点もあるのかもしれない。
しかし問題は,ここでもまた,デジタル放送のコピーワンス信号。
いったい DV キャプチャユニットは,コピーワンス信号にどう反応するのか。
最近,「コピーワンスへの対応」を謳う MPEG キャプチャボードが現れた。その嚆矢というべきは,Canopus の MTVX2004HF だ。Canopus からは,その後も,MTVX-2005 や MTVX-2005USB が発表されている。
もっとも,これらは,コピーワンス信号を検出したうえで,一世代限りの記録を可能にするものだから,DVD-Video を作る目的には向かない。
それに,これらは MPEG キャプチャをするもので,DV キャプチャするわけではない。当然,IEEE1394 でデジタルビデオカメラに繋ぐようなことはできない。
DV キャプチャ用の製品で,コピーワンス信号に対応してコピーワンスの動作をする製品はない。コピーワンス信号はコピー不可とみなすものか,コピーワンス信号に気がつかないものか,のどちらかだけがある。
比較的最近のものは,コピーワンス信号を検出すると,コピー不可として扱う。たとえば Canopus の場合,「アナログ-DVコンバータ製品は,コピーアットワンスには対応しておらず,コピーアットワンス信号が入った映像を入力した場合,コンバートはされず出力されません」ということらしい(2004年12月13日付けテクニカルサポートからの返信)。
また,I-O DATA の製品でも,現行製品はこれと同じく,コピーワンス信号を検出すると映像出力を停止する仕様になっている。
ところが,2004 年 1 月に生産終了になった I-O DATA の GV-1394TV は,デジタル放送(現在は全番組にコピーワンス信号が入っているはず)を普通に録画できる。
私は,2004年末に DV キャプチャユニットの購入を検討した際,これの後継製品である GV-MVP/IDV に付属するソフト mAgicTV 4.1 の評判があまり良くなかったし,デジタル放送の録画ができないようだとあまり使えないから高いお金は払いたくないと思って,中古の GV-1394TV をヤフオクで購入し,恐る恐るデジタル放送の録画を試してみた。
そしたら,特に問題なく録画できたのである。
取扱説明書には,コピーガード信号を検出すると映像出力を停止することが書かれているが,そこにいうコピーガード信号とはマクロビジョンなどのことらしく,コピーワンス信号は非検出のようなのだ。
現行製品の GV-MVP/IDV では,こうはいかない。
借りてきて,デジタル放送の録画を試してみたが,たしかに,製品前面にあるモードランプが点滅して,映像が出力されない。
I-O DATA 製品だとコピーワンス信号を非検出というわけではなく,過去の製品だけがコピーワンス信号非検出だということのようだ。
検索してみたら,I-O DATA に問い合わせて,こんな回答をもらった人がいることもわかった。
そしておそらくはこの後,商品紹介ページの一番最後に書かれている注意書きも, GV-1394TV では「著作権保護信号(コピーガード)が含まれた映像は録画できません」のままだが,GV-MVP/IDV では「著作権保護信号(コピーガード・コピーアットワンス)が含まれた映像は視聴・録画できません」と修正されたようだ(下線は引用者)。
GV-1394TV は,こんな気合いの入ったプロモーションページまで作ったのに,不自然に GV-MVP/IDV に切り替わったなあ,と思っていたが,これには,GV-1394TV がコピーワンス信号を検出しないことも関係しているのかもしれない。
ただ,GV-1394TV と GV-MVP/IDV の違いは,コピーワンス信号を検出するかしないかの差だけというわけではない。GV-1394TV は,輝度変化の激しい映像の場合に破綻を起こすという問題があるらしく,GV-MVP/IDV ではその問題が解決されているという。
両者の基板配置を比べてみた。
GV-1394TV | GV-MVP/IDV |
---|---|
基本的な構成はほぼ共通で,どちらも次のようになっている。
ビデオデコーダ D64011GM は,オートゲインコントロールや,3次元Y/C分離,3次元ノイズリダクションなどの機能を内蔵し,10bit A-D 変換を実現する重要パーツである。一見すると GV-1394TV の基板には見当たらないが,これは,基板の裏面にあって見えないだけ。
基本構成における違いは,画面下部中央やや左寄りにある IEEE1394チップ(NEC が Canopus と共同開発した DV コーデック機能内蔵の IEEE1394 Link レイヤ・コントローラ μPD72893) の型番が,GV-1394TV のは D72893GD,GV-MVP/IDV のは D72893BGD であることだけだ(この「B」が付くと,コピーワンス信号を検出するようになるのかな?)。
ただ,その他のチップまで含めて見た場合は,基板配置にいろいろ違いがあるから,GV-MVP/IDV のほうが GV-1394TV より良くなった点もあるのだろう。
しかし,デジタル放送の録画ができる DV キャプチャ製品は GV-1394TV がきっと最後だから,大切に使おう。
2,3台持っておいてもいいかも。
なお,GV-1394TV は,上級者向けの設定がいろいろできるらしい。その点については,sentaro さんの作った 1394TV 実験くん というページに詳しい記述がある。