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録画済みテープやテレビ放送(アナログ信号)から MPEG ファイルを作る

ここでは,録りためた VHS ビデオテープをデータとして取り込んで MPEG ファイルにしたり,アナログ放送のテレビ番組を MPEG ファイルとして取り込んだりする方法について書く。

[目次]


キャプチャに使う道具の選択

ビデオキャプチャ製品にはどんなものがあるか

(2004年01月25日全部修正)

VHS ビデオデッキやテレビチューナーから出力される信号はアナログなので,それをデジタル化する道具が必要である。
そのためには,通常,キャプチャボードを使う。

ところで,広い意味でのキャプチャボードは大きく2種類ある。

  1. IEEE1394 拡張ボードのうちで DV データの転送専用に作られたもの
  2. ビデオ入力端子から入ってきた信号をデジタルに変換して取り込むもの

a. は「デジタル取り込み」用のものである。デジタルビデオカメラで記録された DV データを取り込む際に使う(ただコピーしているだけだから,正確にいえば「キャプチャ」ボードではない)。デジタルビデオ編集の統合システムの一部として売られている。これについては,「デジタルビデオカメラの映像を編集する >> 映像を取り込む >> 必要なもの」に書いた。

b. のキャプチャボードが,ここでの目的に適した「アナログ信号取り込み」用のキャプチャボードだ。
この種のボードは大きくいって2つの働きをする。

  1. アナログからデジタルへの変換
  2. デジタルデータのエンコード(圧縮)

1. はどのボードも必ず行う,共通の働きである。

2. は,ボードによって異なる。
まず,エンコードするファイル形式で種類が分かれる。MPEG 形式にするものと,DV コーデックの AVI 形式にするものとがある。
また,どちらの形式にエンコードするにせよ,それをボード上の専用チップが行うもの(ハードウェア・エンコード),エンコードは CPU におまかせするもの(ソフトウェア・エンコード)とがある。

さらに,この機能を持った機器は,キャプチャボード(内蔵タイプのもの)のほかに,外付けするタイプのものもある。
外付けの機器はみんなハードウェア・エンコードする。接続方法は,MPEG にエンコードする機器の場合は USB が,DV コーデックの AVI にエンコードする機器の場合は IEEE1394 が一般的のようだ。

このようなビデオキャプチャ機器の代表的なメーカーであるアイ・オー・データ機器カノープスの製品を上の分類に当てはめてみると,次の表のようになる。
各セルの上に書いてあるの(型番の頭に「GV」が付いている製品)がアイ・オー・データ機器,下に書いてあるのがカノープスのもの。値段は 2004年01月24日現在の価格.com の平均である(MTV2400FX は価格.com に掲載がなかったので,これだけは BLESS INTERNET SHOP の価格)。

エンコードの形式 MPEG AVI (DV)
内蔵 ソフトウェア GV-BCTV9 (\15,399)
QSTV10 (\11,951)
ハードウェア GV-MVP/RX (\16,709)
MTV2000 Plus (\31,830)
GV-ADTV (\23,036)
DVTX200-plus (\26,845)
外付け GV-MVP/RZ (\19,243)
MTV2400FX (\22,800)
GV-1394TV (\25,675)
GV-MVP/IDV (\22,048)
@MasterDTV (\26,885)

大きな機能の差は上の表にまとめられるが,作られるファイルの品質は,輝度信号(Y)と色信号(C)とをより高精度に分離する 3D Y/C 分離機能や,次のような画質補正機能の有無にも影響を受ける。

なお,上の表に挙げた製品は,どれも,キャプチャボードとしての機能のほかに,テレビチューナー機能も持っている。
テレビ放送をこの機能を使ってキャプチャする場合は,ファイルの品質はチューナーの性能(ゴーストを除去する機能の有無など)にも左右される。

MPEG にするのと AVI にするのはどちらが良いのか

手軽さなら MPEG,ひと手間かけるつもりなら AVI ということになる。

最終的に MPEG にするのだとしても,DV コーデックの AVI ファイルとして取り込んで,あとで 2-pass VBR などでじっくりソフトウェア・エンコードするほうが良い画質を得られるのは確かだ。
しかし,これをするためには,大きなサイズの AVI ファイルをハードディスクにいったん保存しなければならないし,MPEG にエンコードする時間もかかる。
キャプチャしたあと特に編集をしない(CM をカットするくらいの加工しかしない)なら,最初から MPEG でキャプチャしたほうが賢い。

もっとも,最初から MPEG でキャプチャするなら,パソコンでキャプチャするより,家電の DVD レコーダーでキャプチャするほうがずっと手軽で,トラブルも少なそうだ。家電 DVD レコーダーなら,音声も普通に Dolby Digital(AC-3)に対応しているし。
その意味で,今では MPEG キャプチャボードを買う意味は薄れているといえるだろう。

いまパソコン用のビデオキャプチャ機器を買う意味があるのは,古いアナログ資産をひと手間かけてでもできるだけ良い画質でデジタル化して残したいと考えて AVI でキャプチャする場合だけ,かもしれない。

ハードウェア・エンコードとソフトウェア・エンコードはどちらが良いのか

MPEG にリアルタイム・エンコードするキャプチャ・ボードの場合は,ハードウェア・エンコードするものとソフトウェア・エンコードするもののどちらを選ぶかという問題がある。
この違いをもう一度まとめると,次のようになる。

ハードウェア・エンコード
ボードに付いているチップで MPEG にしてしまい,パソコンの CPU には MPEG 化されたデータが渡される。
エンコードをする負担がCPU にかからないので,処理能力の低いパソコンでもちゃんとキャプチャできるし,他の作業も平行してできる。値段は高め。
ソフトウェア・エンコード
CPU に対しては MPEG 化される前のデータが渡される。
CPU の負担が重く,処理能力の低いパソコンだと処理が間に合わずコマ落ちすることがある。そうまでいかなくとも,CPU がエンコード作業で手一杯になる。値段は安め。

私は,処理能力があまり高くないCPUを使っていることもあって,ハードウェア・エンコードするタイプのボード(Canopus MTV 1000)を使っている。
また,いくらCPUの能力が高くても,次々に送られてくる信号に遅れをとらないようにソフトウェアで MPEG 化するためにはやはりちょっと画質を犠牲にしなくてはならないようだから,MPEG にリアルタイムエンコードするならやはりハードウェア・エンコードのほうがよいだろう。

ただし,ソフトウェア・エンコードするタイプのボードには,上の表で「※」を付けた部分の使い方ができるものがある。
この使い方は,DV コーデックではなく,無圧縮 AVI や 可逆圧縮コーデックでの AVI でキャプチャするための使い方である。

MPEG にエンコードするにしろ DV コーデックの AVI にエンコードするにしろ,いったん圧縮したものは元には戻らない。
圧縮前の映像をそのまま見たいなら,無圧縮 AVI で取り込むか,可逆圧縮の(無圧縮状態に戻せる)コーデックでエンコードして取り込む必要がある。
ハードウェア・エンコードのキャプチャボードでは,上に書いたとおり,ボード上のチップでエンコードされ,CPU には MPEG や AVI(DV) のデータが渡されるのだが,無圧縮 AVI などで取り込むためにはそのような機能は不要だし,むしろ邪魔になることもありうる。
無圧縮 AVI などで取り込むなら,エンコードせずに CPU にデータを渡してくれるソフトウェア・エンコードのキャプチャボードのほうが有利なのだ。

もっとも,無圧縮 AVI での取り込みは,現実的ではない。
無圧縮 AVI だと,その1秒間のビデオのデータ量は次のとおりになるようだ。

これらを全部掛け合わせて,12(ビット/ピクセル) × 345600(ピクセル/フレーム)×29.97(フレーム/秒)= 124291584 ビット/秒。
さらに,オーディオ部分が1秒あたり 1536000 ビット(サンプリング周波数 48 KHz ,サンプリングサイズ 16 ビット,ステレオ音声の場合)。

ビデオとオーディオを合わせると,125827584 ビット/秒 ,ほぼ 120 Mbpsとなる。
たった1秒で約 15 MB というサイズのデータになってしまうのである。
1分間だと約 900 MB,1時間だと 54,000 MB = 52.7 GB になる。

これでは,ハードディスクに保存するのは難しい。ディスクの容量の限界もさることながら,ハードディスクにこんなスピードで書き込みつづけられるマシンを構築するのは困難で,書き込みが間に合わないためにコマ落ちする危険が高い。
DV コーデックで圧縮すると,この5分の1の約 24 Mbps で書き込みつづければよいのだが,それでも,少し遅いマシンだとコマ落ちしてしまうくらいなのだから。

そこで,普通は無圧縮 AVI ではなく,可逆方式コーデックを使う。
この代表として Huffyuv が挙げられる。
このコーデックの作者のページはもう閉鎖されてしまっているが,そのソースを使った新しいバージョンらしきものが,次のサイトからダウンロードできる。
  ・HuffYUV revisited
このコーデックでデータは3分の2程度に圧縮されるらしい。
このコーデックを使ってソフトウェア・エンコードできる代表的なソフトとして,ふぬああがある。
ただしこれを使うのはとても難しい。一度試してみたが,挫折した。
いつかはこれらを使いこなしたいものだ。

内蔵か,外付けか

外付け機器には,次のデメリットがある。

しかし,これらの点が特に障害にならないなら,外付けのほうが便利だし,マシンが不安定になることも少ない。
従来は転送スピードの点でちょっと心配だったが,その問題も IEEE1394 にはないし,USB も 2.0 ではだいたい解決されているようだ。
したがって,いまハードウェア・エンコードのビデオキャプチャを買うなら,外付けのほうがよさそうだ。

カノープスか,その他か

昔からこの分野ではカノープスが強い。
今も,技術の高さではきっとトップなのだろう。
MTV 1000 の性能も,ほぼ満足できる。

しかし,カノープスの製品は,素人の目線まで下がって作ってくれていない感じのするところがある。
まだ,トラブルは自分で何とか解決できるレベルのユーザーを想定して作られているのではないかと思えるのだ。

その点,アイ・オー・データは,自社開発の技術など何にもなさそうだが,うまいパッケージングで,魅力的な製品が並んでいる。
使ってみてはいないからまったく無責任な評価だが,今はアイ・オー・データのほうがお買い得かもしれない。

なお,Canopus にはサポートフォーラムが存在する。
  ・カノープスサポートフォーラム

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取り込む際の注意事項

MEDIACLUISE を使って取り込む場合

Canopus MTV 1000 には MPEG キャプチャ用ソフトとして,MEDIACLUISE が付属する。
これを使う場合の設定項目については,カノープスのサイトの次の FAQ の記載を読むとだいたいわかる。
  ・MPEG出力時の各設定項目について

このうち,画質などはともかくとして,あとでファイルを編集しても壊れないようにするために注意すべきことは,GOP オプションClosed GOP にチェックを入れることである。

最近までしばらくのあいだ,次に書く Feather G-Spec を使ってキャプチャしていたので,MEDIACLUISE の使い方はかなり忘れてしまった。
思い出したら,また補足する。

Feather G-Spec を使って取り込む場合

MEDIACLUISE はやや使い勝手が悪いので,2003年までは,Canopus からサポートなしで提供されているFeather G-Spec 体験版 を利用していた。
しかしこのソフトは,2003年末に,2004年以降の予約をすると予約録画時間が狂うという大問題があることが発覚した。Feather の製品版ソフトのほうはバグフィックスがなされたが,体験版は,2004年1月末の現在もこのような不具合が残ったままのプログラムが配布されている(MTV G-Spec.ソフトウェア(体験版))。
このソフトは予約録画には使ってはいけない。

ただ,製品版のほうでの設定も体験版とほぼ同じだろうから,製品版をお使いの方のために,体験版のスクリーンショットで,おすすめの設定方法を書いておこう。

  1. 設定画面を表示させる
    Feather 設定画面で,ハードウェアエンコードの設定をする画面にする。デフォルトでは,次のように設定されている。
    [Featherの設定画面−デフォルト]
  2. ビデオ設定をする
    上の画面で,ストリームオーディオ+ビデオ に,画質マニュアル設定 にして,左側のツリー表示の ビデオ をクリックする。すると次のような画面が表示される。
    [Featherの設定画面−ビデオ設定]
    ここで,必ずすべきなのは,GOPオプションの Closed GOP にチェックを入れること。これをすると,データ量が多くなってしまうが,あとで MPEG ファイルを切り貼りする際,多少作りの雑なツールを利用してもファイルが壊れないようにするには,これが必須のようだ。
    GOP 完結というのにもチェックを入れると,より頑丈になるみたいだが,これについてはまだよく理解できていないので,チェックは入れないでいる。

    ビットレートについては,アクション系の映画やスポーツ番組を録るときは,ハードディスクの転送速度と容量が許す限り大きな数字にする。また,その場合には VBR にしたほうがよいだろう。
    ただ私は,マシンの能力がそれほど高くないということもあり,ビットレートについてはたいていデフォルトの CBR 5,000 kbps のままにしている。
  3. オーディオ設定をする
    左側のツリー表示の オーディオ をクリックする。すると次のような画面が表示される。
    [Featherの設定画面−オーディオ設定]
    ここで,形式PCM Stereo にする。これは,国内の規格に完全準拠した DVD-Video を作成することをめざしているため。このことの意味については,「DVD-Video にする >> DVD-Video の音のトラブル >> 音が再生されない」を参照。

    PCM Stereo にした場合,オーディオビットレートはグレイアウトして変更できなくなる。これは,PCM Stereo は無圧縮なので,サンプリングレートが 48000 Hz (DVD-Video 規格に準拠)ならビットレートは 1536 kbps に決まっているからである。

    なお,最初の設定画面でストリームを オーディオ+ビデオ に変更していなければ,ここで PCM Stereo は選択できない。
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エレメンタリストリーム形式でキャプチャした MPEG ファイルを見るには

上のように設定を変更してキャプチャすると,MPEG ビデオのエレメンタリストリーム(*.m2v)と無圧縮オーディオ(*.wav)の2つのファイルができあがる。
たいていのビデオ再生ソフトでこのビデオファイルを再生すると,映像は見られるが音声は聞こえない。

しかし,Media Player Classic というソフトは,m2v ファイルを指定して再生させると,同名で拡張子が wav になっているオーディオファイルも一緒に再生してくれる。
Media Player Classic のダウンロードは下記 URL から。
  ・http://sourceforge.net/projects/guliverkli/

[Media Player Classic 画面]

これがMedia Player Classic の起動画面(Version 6.4.7.5)。
Windows Media Player 6.4 そっくりのシンプルな感じでありながら,機能は盛りだくさんの,ありがたいソフトだ。

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