MPEG ファイルにしてからも,要らないところをカットしたり,圧縮率を上げてファイルサイズを小さくしたりといったことはできる。
[目次]
MPEG ファイルは,編集の素材にするものではなく,鑑賞するためのものだ。編集には向いていない。
それでも,テレビ放送から CM 部分をカットしたり,音楽番組から自分のお気に入りのアーティストの出演部分だけを取り出したりするくらいはしたい。
それにはどうすればよいのか。
無駄な部分をカットするだけなので,私は,Canopus Mpeg Cutter(以下,CM Cutter)で用が足りている。処理時間も早く,カットする部分しか再エンコードしないので,画質も低下しない。
無料で Canopus の下記サイトからダウンロードできる。
ただ,このソフトは,同社のMTVシリーズが使用されているマシンにしかインストールできない。また,編集後のファイルの互換性に問題が発生する場合もあるようだ。つまり,DVDオーサリングソフトによっては,このソフトによって編集されたファイルを扱えない場合があるのだそうだ。
私も,どうもそのせいではないかと思われる互換性問題を経験している。
また,MTVシリーズを使用していない人は CM Cutter は使えないので,他のソフトを使うしかない。
互換性問題がなく,MTVシリーズを使用していない人にも使えるMPEG 編集ツールとしては,次の2つが考慮に値すると思う。
なお,CM Cutter については,アップデータが公開されており(2002年4月9日付け),これを当てることと,「取り込む際の注意事項」に書いたようにMPEG キャプチャのときに Closed GOP にすることで,問題の発生はかなり減少するのではないかと思う。
CM Cutter のアップデータに関するページは下記のとおり。このページはどういうわけか CM Cutter のダウンロードページからはリンクされていない。CM Cutter の不具合を放置することで MpegCraft を買わせる戦略と解釈するほかないだろう。
上に書いたような事情は,2005年初めの現段階では,大きく変わった。
TMPGEnc MPEG Editor が2004年7月28日に販売開始され,その後のアップデートを経て,かなり使えるソフトになっているからだ。
今なら,MPEGファイルの編集には,TMPGEnc MPEG Editor が一番だと思う。
私自身はまだ体験版を数日試しただけだが,このソフトは次のような特長を持っている。
逆に弱点は,前に切った部分を復活させるのが難しいこと。
直前に切った部分を復活させるなら,[やり直し]を行えばよいのだが,その前に切った部分を復活させるには,[カット編集をリセット]することになるので,作業をすべて白紙にしてしまうことになるのだ。
しかし機能面での弱点といえるのはこれだけではないだろうか。
カット編集の操作方法も,発想が他のメーカーのソフトと違うところがあるので,それらに慣れた人にはちょっとなじみにくい面があると思うが,TMPGEnc シリーズ全体で操作性が統一されているので,同シリーズのソフトを使っている人には非常に使いやすい。
もう一つ弱点を挙げれば,単体ソフトで,ダウンロード版でさえ 4,480 円という価格。
機能としては,MPEGエンコードソフト,あるいはDVDオーサリングソフトの拡張プラグイン程度のものなので,それらと連動するものであってほしいし,価格も 2,500 円くらいであってほしいところなのだが。
TMPGEnc MPEG Editor は TMPGEnc シリーズのソフトの一つだが,シリーズ内の MPEG エンコードソフト(TMPGEnc 3.0 XPress)や DVD オーサリングソフト(TMPGEnc DVD Author)があれば,MPEG の編集(切り貼り)もできる。
ではいったい,MPEG Editor のような,フレーム単位で編集できる MPEG 編集ソフトは何の役に立つのか?
私の場合,目的は2つだ。
この2つの作業を,TMPGEnc MPEG Editor を使えば非常に快適にできる。
ただ,CM カットのためには,Canopus Mpeg Cutter のような簡易ツールのほうが,操作のしやすい面もある。
たとえば,Canopus Mpeg Cutter には,[指定時間にジャンプ],[設定秒数だけ進む・戻る],[10分進む・戻る],などの機能がある。
設定秒数をデフォルトの15秒にしておけば,CM の時間は15の倍数だから,CM 開始のところでマークして,[設定秒数だけ進む]のアイコンをクリックしていけば,CM 終了のところがすぐ見つかる。
こうした機能は,TMPGEnc MPEG Editor には,そういうものとしては用意されていない。しかし,それに近いことが,オプション設定を変更することによって実現できる。
[オプション]アイコンをクリックして表示されるメニューから,[環境設定]を選び,そこで開かれるダイアログボックスで,[環境2]のタブに切り替える。
すると,次のような画面になる。
ここで,PageUp/PageDown キーで何秒移動(あるいは何フレーム移動など)するか,Shift キーとそれを一緒に押すとどうなるか,といったことを設定する。
たとえば図のように,PageUp/PageDown キーで 15 秒後退/前進,Shift キーと同時に押したときは 60 秒後退/前進する,と設定すれば,60秒ずつ移動して CM を探し,見つけたら 15 秒ずつ移動して CM の終わりを探す,といったことができる。
さらに,たとえば同じチャンネルの連続する 10 分の番組と 20 分の番組を録画し,あとで2つに分ける,というような操作を繰り返すことがわかっているなら,600秒の移動をいずれかのキー操作に割り付けておくことで一気に 10 分移動するようなことができる。
あるいは,「シークバーをクリックすると直接その場所へ移動する」のチェックを外すと,シークバーをクリックしてもクリック位置に移動するのではなく,クリック位置の方向へ一定時間分移動するようになる。そして「シークバーをクリックしたとき」の移動時間が設定できるようになるので,そこで好みの移動時間を設定すればいい。
ただ私は,直接移動してくれるほうがスピーディーに作業できるので,ここは変更していない。
以上のような操作をするには,あらかじめ,移動単位を設定しておく必要がある。そうではなく,指定時間にジャンプするには,[編集メニュー]の[時間/フレーム番号を指定して移動]というコマンドを実行する(キー操作だと,Ctrl + J)。
なお,キー操作での移動単位の指定や,シークバーをクリックしたときの移動単位のしては,TMPGEnc 3.0 XPress でもまったく同じようにできる。シリーズとしての操作感の統一ができているのだ。
ところが,TMPGEnc 3.0 XPress では,シークバーをクリックしたときにクリック位置に直接移動することはできない。また,指定時間にジャンプするコマンドもない。これは,TMPGEnc MPEG Editor の開発にあたって,TMPGEnc 3.0 XPress への要望を取り入れたということなのだろうけれど,どうせなら,TMPGEnc 3.0 XPress も同じような操作方法にしてほしいものだ。
アナログキャプチャボードで MPEG にエンコードしながら取り込む場合でも,それからDVD-Video を作るなら,1枚のメディアに入りきるように再度エンコードで小さくしたいという場合が多いだろう。
ちょうどよく収まるように,最初に取り込むときのビットレートを設定する,という方法もあるが,おすすめしない。計算違いも起こしやすいし,リアルタイムエンコードで小さいサイズにさせようとすると,画質がかなり「?」だからだ。
取り込むときはできるだけ高画質のままにしておいて,あとで必要に応じてソフトウェアで再度エンコードする,というのがおすすめだ。
ここは TMPGEnc Plus 2.5 の独壇場である。
CINEMA CRAFT ENCODER Basic は,MPEG ファイルを再エンコードする機能を持っていないので,この目的には利用できないのだ。
TMPGEnc Plus 2.5 も,従来は MPEG ファイルをデコードして開く機能は搭載されておらず,Windows にインストールされたMPEG-2 デコーダーを Microsoft DirectShow 経由で利用して、MPEG-2 ファイルを読み込むことができるだけだったが,2003年7月16日リリースの Ver2.520 から自前のデコーダーが搭載されている。
また,前掲の Canopus MpegCraft を使えば,ハードウェアエンコードで再エンコードができるようだから,急いでいるならこれを使うという手もあるだろう。
ただし,「編集したビデオから MPEG-2 ファイルを作る >> MPEG-2 にするソフトはどれがいいか」で Canopus DV-MPEG Converter によるエンコードについて書いたのと同様に,低ビットレートにしたときの画質に関しては TMPGEnc Plus 2.5 の勝ちということになりそうだと思う。
[2005/01/09追記]
現在では,TMPGEnc 3.0 XPress が発売されており,対応する入出力ファイル形式もこちらのほうが TMPGEnc Plus 2.5 より幅広い。
今であれば,TMPGEnc 3.0 XPress の独壇場と書くところだ。
「DVD-Video にする >> DVD-Video の音のトラブル >> 音が再生されない」に書いたように,最終的に再生互換性が万全な DVD-Video にするつもりなら,MPEG ファイルを作るときに,MPEG ビデオのエレメンタリストリーム(*.m2v)と無圧縮オーディオ(*.wav)に分けておくのがベスト。
しかし,この形式のファイルをビデオとオーディオの同期をとって編集できるツールは,今のところないようだ。
だから,たとえばテレビ番組を MPEG キャプチャして DVD-Video にするとき,CM 部分をカットするなら,次のどちらかにするのが普通だ。
a.だと MPEG ファイルにする段階で音声に一度圧縮をかけてしまうので,DVD-Video にするときに,再生互換性の高いリニア PCM や Dolby Digital(AC3)で音声を記録しようとすると,一度デコードして再エンコードすることになり,音質の面で不利。
そこで,音重視の番組などは b.でゆくことになる。
この方法でも,「MPEG-2 形式のデータを作る >> 録画済みテープやテレビ放送(アナログ)から MPEG ファイルを作る >> エレメンタリストリーム形式でキャプチャした MPEG ファイルを見るには」に書いたように,DVD-Video にするまで見られないということはない。
ただこれだと,DVD-Video にするまでは,ムダな部分を保存しつづけることになるのがイヤな感じもする。
というわけで,多重化されていない MPEG ファイルのビデオとオーディオを同期させて編集できるツールを探していたところ,Mpeg2Schnitt というのがあった。
このツールも,残念ながら,MPEG ビデオのエレメンタリストリーム形式(*.m2v)と無圧縮オーディオ(*.wav)とを同期させて編集することはできない。だから私の要求を満たしてはいないのだが,多重化されていない MPEG ビデオと MPEG オーディオを同期させて編集できる唯一のフリーソフトではないだろうか,そのうえ,MPEG ビデオと Dolby Digital(AC-3)音声の同期編集も可能なのである(AC-3のライセンス問題はないのかな。ちと心配)。
このツールは,ドイツで開発されたものらしい。オリジナルは下記サイトで入手できるので,ドイツ語のわかる人はこちらからダウンロードすればいい。
・Martin's Internetseite
私はどちらかというと英語のほうがましなので,英語化されたもののほうを使う。英語版は Doom9 のダウンロードページで検索すればすぐ見つかる。
Mpeg2Schnitt は,不要部分をカットして必要部分を抜き出すだけのツールなので,使い方は簡単。
必要部分の開始位置と終了位置を指定して,保存すればよいだけだ。
ただ,保存を実行する方法が最初はわかりづらかったので,そのあたりを説明しておこう。
Mpeg2Schnitt の起動画面はつぎのとおり。
図のように,[File] メニューから [Open video/audio] を選択して,編集対象のファイルを開く。
すると,指定したファイルが分析されて読み込まれる。
下の図のように,分析された情報が左の枠内( A )に表示され,センターにプレビュー画面が表示される。
それらの下( B )には,読み込んだファイルが表示されている。図のように,MPEG ビデオのファイルを読み込むと,それとセットになるオーディオファイルも一緒に読み込まれる。
切り出す範囲を指定するには,C のスライダーで開始位置を指定して G の[In]を,終了位置を指定して[Out]を,それぞれ押す。
位置を正確に指定するには,D 〜 F を使う。D はプレビューの開始・停止に,F は1フレームずつの移動に使うが,あまり出番はないだろう。
最もよく使うことになるのは,E だ。MPEG ファイルは GOP の途中で切るわけにはいかないので,開始位置・終了終了にできるポイントは限られてくる。[<In][In>]は開始位置に指定できるポイント( I フレーム)を1つずつ,[<Out][Out>]は終了位置にできるポイント( I フレームまたは P フレーム)を1つずつ移動するのに使うボタンだ。
[In][Out]ともに指定し終えたら,下の図の J の[New]ボタンを押す。このボタンは,範囲指定ができていない状態のときにはグレイアウトしていて押せない。
押すと,図のように,H の Cut List に,切り出す範囲が登録される。このリストには複数指定できるし,別々のファイルからも指定できる。つまり,MPEG ファイルの分割にだけではなく,結合にも使えるということだ。
Cut List への登録が済んだら,I の[Cut]ボタンを押す。すると,ファイル名を指定するダイアログボックスが表示されるので,そこでファイル名を入力して[保存]ボタンを押せば,指定した範囲が切り出されて保存される。
通常は,Cut List に登録した部分が,順番につなげられたファイルとして保存される。
to separate files は,登録した範囲をそれぞれ別ファイルに保存したいときにチェックする。
登録した範囲のうちの一部だけを切り出して保存したいときは,リストから選択して,selected only にチェックを入れる。
そのほか,途中でプロジェクトファイルを保存することができることなどは,一般的な動画編集ファイルと一緒だ。
現在では,上で書いたような目的のためにも,TMPGEnc MPEG Editor が使える。
MPEG2Schnitt にもできなかった,「MPEG ビデオのエレメンタリストリーム形式(*.m2v)と無圧縮オーディオ(*.wav)とを同期させて編集すること」ができるのだ。
編集結果は,そのまま MPEG ビデオと無圧縮オーディオとして出力することもできるし,音声だけエンコードして出力することもできる。
またビデオとオーディオを多重化して出力することももちろんできて,それが MPEG ビデオと無圧縮オーディオとの組み合わせでも可能である。つまり,音声部分が wav形式である MPEG ファイルを生成することもできるわけだ。
これはさりげなく,すごいツールだと思う。
[2011年01月08日追記]
TMPGEnc MPEG Editorの最新版は現在はTMPGEnc MPEG Editor 3である。
ハイビジョンのMPEGファイルもなんなく扱えて,気持ちよい。
→
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