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テレビ番組をパソコンで留守録するときの省電力設定

(2005年02月11日追加)

テレビを留守録する場合,録画開始までの間ずっとパソコンの電源を入れっぱなしにしていると,電気代がかさむ。
これを避けるには,Windows に用意されているスタンバイ状態や休止状態にする機能を使えばいい。特に休止状態を使えば,DVD レコーダーにも負けない低消費電力になる。
ただしこれにはデメリットもあるので,注意が必要だ。

[目次]


待機時の消費電力

現在の税込みの電気料金は,120 kW までは 1 kW 当たり 15 円強,それを超え 300 kW までは 20 円強,それを超えると 22 円強,と決められている(東京電力の一般家庭向け契約の場合。これと基本料金を合わせたものが電気代)。
他の用途で 300 kW は超えてしまうから,留守録に使う電気の料金は 1 kW 当たり 22 円と考えることにする。

DVD レコーダーの場合

DVD レコーダーであれば待機時の消費電力は毎時 2 W 程度だ。電気料金の定め方に単位を合わせれば,0.002 kW ということになる。
1日24時間ずっと待機させたとして,1か月間の電気代は,こうなる。

0.002(kW/h) × 24(h/日) × 30(日) × 22(円/kW) = 31.68 円

パソコンの場合

これに対し,留守録開始までの間ずっとパソコンを普通に稼働していたら,その電気代はどれくらいか。
パソコンの消費電力は,使っている CPU や,マザーボード上のチップ,拡張カード,ドライブの台数などによって異なるが,仮に 200 W としておく(仮定としても,これは多すぎかも。サンワサプライのワットチェッカー(TAP-TST5)のような,消費電力を測定できる機器を使って,今度計ってみよう)。そして,留守録までの時間が12時間で,それを毎日やったとすると,1か月間の電気代は,こうなる。

0.2(kW/h) × 12(h/日) × 30(日) × 22(円/kW) = 1584 円

これは DVD レコーダーと比較してあまりにも大きい。
パソコンで留守録するのは早くやめたほうがよさそうに思える。

パソコンの省電力状態

しかし,実はそうでもない。パソコンでも,電力をあまり消費しない状態にすることができる。
Windows 2000 や Windows XP でいう,スタンバイ(サスペンド)と休止状態(ハイバネーション)というのがそれだ。

スタンバイも休止状態も,ハードディスク等の電源をオフにすることで省電力を図るもの。
スタンバイは実行中のデータがメモリで保持される(Suspend To RAM)のでメモリへの電力供給は必要なのに対し,休止状態はメモリの内容をハードディスクに書き込んで(Suspend To Disk),メモリも電源オフにする。つまり,休止状態はパソコン全体の電源がオフになっているわけだ。
この状態で待機させておけば,パソコンでの留守録も DVD レコーダー並みかあるいはそれ以下の消費電力でできる。

問題は,スタンバイや休止状態から,録画時刻に復帰できるかどうかだ。

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録画時間になるとスタンバイや休止状態から復帰できる

手動での復帰とタスクスケジューラでの復帰

スタンバイからは,キーボードやマウスなどで何か操作すると復帰する。メモリにデータが残っているので,ハードディスク等のデバイスの状態を確認し電力供給を再開する手順だけ完了すれば,元の状態に戻る。
休止状態からは,電源スイッチを押して復帰する。通常の起動時と同じチェックの後,OS のブートに入る代わりに,ハードディスクに書き込まれた内容をメモリに読み出して,元の状態に戻る。

このほか,復帰方法にはもうひとつある。
タスクスケジューラにタスクが登録されていると,そのタスクの実行予定時刻になったら,復帰するのだ。つまり,録画予約をタスクスケジューラに登録するソフト(たいていの録画ソフトが当てはまるだろう)で録画予約してあると,その時刻に復帰するわけである。

休止状態からでも大丈夫

私は最初のうちずっと,スタンバイなら録画時刻になれば復帰するけれど,休止状態からは復帰しないのだと思っていた。
しかし,そうではなかった。仕組みはわからないが,休止状態からも復帰するのだ(ただし,すべてのパソコンがそうだというわけではない)。
となると,省電力を極めたいなら,休止状態にすればいい。なんせ電力消費ゼロなのだから(厳密にいえば,電源を繋いでいる以上すこしは消費しているのだろうけれど)。

Suspend To RAM のメリット・デメリット

もっとも,スタンバイでも,Suspend To RAM であれば,電力消費はかなり抑えられる。メモリの消費電力など,たいしたものではないからだ。特に,メーカー製パソコンはそのあたりのチューニングがよくされていて,消費電力は DVD レコーダーの待機状態時並みらしい。しかし,自作パソコンではそうはいかず,5 W くらいは消費されているという。
それでも,まあ,それくらいなら,復帰が速い分,スタンバイの方を選んだほうがいいかもしれない。休止状態からだと,復帰が間に合わなくて,予約録画していた番組の頭の部分が切れているような気もするし。

しかし実は,Windows でスタンバイにしたときには,上で説明した Suspend To RAM が行われるとは限らない。Suspend To RAM は ACPI に規定された「S3」に相当するものだが,マザーボードがこれに対応していなかったり,BIOS の電源管理設定で ACPI Suspend Type の項目が「S1」になっていたりすると,スタンバイにしてもこの「S1」状態にしかならない。「S1」状態はメモリ以外のいくつかのデバイスに電力が供給されているので,けっこう電力を消費する。

また,「S3」は,パソコンに使用されているすべてのデバイスがそれに対応していないと,不具合が発生することもあるらしい。私の自作パソコンに使用したマザーボードの BIOS の初期設定は,「S1」だった。このことを考慮したからだろうか。
メーカー製パソコンは拡張性が低くて,非対応デバイスを使用する余地もないから,「S3」にしても問題が発生しづらい,ということかもしれない。
そう考えると,拡張性が高く,非対応デバイスを使うかもしれない自作パソコンでは,「S3」はまだ使いづらい。

省電力状態の使い分け

では,休止状態にするのがいいのか。

そうとは言えない。休止状態にしていると,復帰が録画時刻に間に合わない場合があることは上に書いたが,そのほか,「S3」と同様の問題が発生する可能性もあるようだ。
Windows XP の SP1 の場合,137 GB を超える容量の ATAPI (ATA Packet Interface) ハードディスクでは,スタンバイまたは休止状態に入った場合やメモリダンプの書き込みでハードディスクドライブが破壊される可能性があるという。
Windows XP の SP2 では,上記のハードディスク破壊の可能性は解決されたことになっているが,私は,「はじめに >> 動画編集に使うパソコン(2004年編) >> ハードディスク」の「外付けの大容量ハードディスクの利用には注意が必要」に書いたように,どうも休止状態にしたことが影響しているらしいトラブルを経験している。

使用するデバイスが対応しているかどうかの注意が必要な点では,スタンバイ(S3)と大差ないようだ。
実際,「サスペンド・レジュームをサポートしない」と表示している機器(たとえば,Plextor のシリアルATA接続のDVDドライブ PX-712SA)は,「S3」状態と休止状態(これは ACPI でいう「S4」に当たる)をまとめてサポート外にしている。
上記「外付けの大容量ハードディスクの利用には注意が必要」に書いた Princeton PEC-35IU に関しても,同社からは「サスペンドからの復帰はサポートしていない」旨の答えが返ってきている。
それ以外にも,私のマシンでは,休止状態からの復帰後はハードディスクの温度取得ができなくなるのか,HDD温度計で温度が“XXX”と表示されるなど,どこか変だ。

休止状態も,ある程度のリスクを伴っていることは間違いない。
Windows が休止状態(「S4」)に対応したのは「S3」より先だったようだから,その分だけ,休止状態の方が「S3」より問題が解消されていると期待できる,とは言えるかもしれないが。

以上をまとめると,次のようになろうか。

  S1 S3(スタンバイ) S4(休止状態)
省電力効果
メモリ以外にもいくつかのデバイスが電力消費

メモリだけが電力消費

消費電力ほぼゼロ
復帰
きわめて速い

速い

少し時間がかかる。録画予約した番組の頭が切れないよう注意が必要。
安全性

このあたりを見極めて,いくつかの省電力状態を使い分けるしかないだろう。
私は予約録画のときは休止状態にすることが多い。予約録画は主に旧マシンのほうでやっているのだが,こちらは休止状態にしてもこれといった不都合が起こっていないので。

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休止状態にするには

では,休止状態にするにはどうやるのか。Windows XP の場合で説明しよう。

休止状態を有効にする

まず,Windows の初期設定では休止状態は無効になっているから,有効にする。
コントロールパネルの電源オプションを起動し,休止状態タブを開いて,「休止状態を有効にする」にチェックを入れる。
これで,休止状態に入れるようになる。ただし,これをすると,メモリ内容を書き込むためにハードディスク領域が使われることになる。メモリ容量と同じ分だけ,ハードディスクが狭くなるわけだ。

回復時にパスワード不要にする

次に,同じ電源オプションの詳細設定タブを開いて,「スタンバイから回復するときにパスワードの入力を求める」のチェックを外す。
ここにチェックが入っていると,パスワードを入力するまでスタンバイ(休止状態も含む)から復帰しない。タスクスケジューラが予約録画のために休止状態からの復帰を要求し,それに応えて復帰までもう一歩のところまで行きながら,そこで待たされることになる。

録画予約ソフトによっては,その録画を実行するユーザーの名前とパスワードをタスクに記憶させることで,その録画だけは実行させるということができるものもある。
そういうソフトを使う場合はこの項目にチェックを入れていても復帰はできるが,そうでないならチェックを外さなくてはならないのだ。また,そういうソフトを使う場合でも,ここにチェックが入っていると録画予約だけしか実行されず,録画後にまた休止状態になるような指定は効かないことになる。

休止状態にする

録画予約を済ませたら,実際に休止状態にするには,次のようにする。
スタートメニューの[終了オプション]を選択してコンピュータの電源を切るダイアログを表示させる。メニューには「スタンバイ」「電源を切る」「再起動」の3つしかないが,そこで Shift キーを押すと,一番左のアイコンが「休止状態」に変わる。
その状態で,そのアイコンをクリックすれば,休止状態になる。

なお,電源オプションの電源設定タブで,「システム休止状態」のところに時間を設定すると,何の操作をしない時間がその設定時間に達した時に休止状態に入るようになる。
これは思いがけないときに休止状態に入ってしまうことにつながるので,家のパソコンでは,ここには時間を設定しない(「なし」に設定しておく)のがいいだろう。




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