動画を扱うのだから,パソコンも,それなりに高い能力のものでないと,実用的ではない。
次のような点をクリアしている必要があるようだ。
[目次]
代表的なソフトの必要動作環境(「なんとか動きますよ」という環境),推奨環境(「それなりに快適に動きますよ」という環境)は以下のとおりとなっている。
このように見ると,Pentium III 800 MHz くらいが最低線といえる。
私は実際にちょうど Pentium III 800 MHz を使っている。動画編集ソフトは,上の一つ前のバージョンである Ulead VideoStudio 6 SE を使っており,これは推奨環境が700MHz以上となっている。これを上回っているのだが,それでも新規プロジェクト作成のときやファイル書き出しのときにはかなり待たされるという印象がある。また,TMPGEnc Plus 2.5 を使って MPEG エンコードをするときには,相当時間がかかる。さらに,TMPGENc DVD Author 1.5 を使って,音声を再生させながらオーサリングしていると,しばらくしたら「CPU 能力が足りないため,音声の再生を自動停止しました。」というメッセージが出て,再生が停止してしまう。
しかし,これらは,業務レベルでたくさんのデータを扱わなければならないのでなければ,まあなんとか我慢できるレベルだと感じている(最後の問題は,ときどき我慢できないときがあるけれど)。
もちろん,CPU は速ければ速いにこしたことはないし,動画編集には,Pentium 4 のほうが適した設計になっているといわれている。
ただ,Pentium III には,あとで「ハードディスク」のところで扱う熱の問題での優位性などもあるから,Pentium III の 800 MHz 以上のものを使っていて安定動作しているパソコンであれば,買い換えまでは考えなくてもよいのではないか。
[2005/01/09追記]
「はじめに >> 動画編集に使うパソコン(2005年編)>> スペックの違いは体感できるか」に書いたとおり,ストレスなく編集するには,800 MHz はやはり苦しかった。
今では,2.4 GHz くらいはあるものにしようと勧めたい。
512 MB 積みましょう。
256 MB ではちょっと足りないようだ。
逆に,512 MB 以上積んでも,それほど大きな差は出ないみたいだし,メモリは1枚だけ挿すのが安定性の面から望ましいという意見もあるので,512 MB のメモリ1枚にしておくのが無難だろう(といいながら,私自身は,マザーボードの制約から,256 MB のメモリを2枚挿しているが)。
ここが一番重要なところだといえるだろう。
動画編集では,高速・大量のデータ読み出し・書き込みが発生する。
そのために,大容量で高速なハードディスクが必須だ。
OSをインストールしているハードディスク(以下,「システムディスク」と呼ぶ)とは別に,データ用に高速で大容量のハードディスクを用意しよう。
システムディスクとデータ用のディスクが同じだと,動画データの読み書きのためのアクセスがシステムディスクに対して行われることになり,動作が不安定になるおそれがある。これは,1台のハードディスク上でパーティションを切って2つのドライブにしても避けることはできない。
そのため,この2つを別にすることは,かなり重要なのだ。
さらには,データ用のハードディスクも2台以上あったほうがよい。元データを加工して別ファイルに書き出す場合,読み出しのためのアクセスと書き込みのためのアクセスが同じディスクに対して行われるのは過酷なこと。
一つのディスクから読み出し,別のディスクに書き込むのが望ましく,また処理速度も速いはず。
ということで,システムディスクのほかに2台用意するのがいいということになる。
「そんな贅沢なこと」と思われるかもしれないが,幸い,今では,高速で大容量なハードディスクも安くなった。
私はデータ用には Maxtor の DiamondMax 16 シリーズ(ATA133,5,400rpm,キャッシュ2MB)の 120GB モデル(4R120L0)を2台使っている。少し前に秋葉原に行ったら,これの 160GB モデル(4R160L0)が 12,300 円だった(2003年12月10日,BLESS調べ)。
2台で24,600円(プラス消費税)。そう小さな出費ではないが,投資するポイントとしては非常に重要なところであることを考えると,過大でもないだろう(ただし,古めのパソコンだと大容量のハードディスクに対応していない場合がある,という問題には注意しよう)。
複数のハードディスクを使う場合に問題になるのは,値段よりも,むしろ熱問題だろう。3台も内蔵したら,パソコンのケースの中は熱地獄だ。特に夏は大変。ハードディスクの温度は 55 度を超えてしまうこともある。
これについては,次のような対策が考えられる。
外付けハードディスクでも,IEEE1394 タイプなら,転送速度は十分確保できるようなので,A.は有力な選択肢である。ただ外付けハードディスクとなると,上に書いたような値段では手に入らないし,選択の幅も狭くなってしまい,思いどおりの性能のものが見つからないかもしれない。そのへんの兼ね合いがつくなら,これが最も現実的な方法だろう。
ケース内の冷却の方法としては,でかいケースを使って,ディスクとディスクの間にたっぷり余裕を持たせる,というのが基本的戦略となるだろう。
ハードディスクのための冷却ファンもあるけれど,どうなんだろうね。試してみる気にはならない。むしろ,ケース内全体の空気の流れを確保することのほうが大事なようだ。
また,回転数の低いハードディスクを使うというのも,熱への配慮の一つ。回転数が低いといっても,7,200rpm じゃなく 5,400rpm のを使う,という程度のことなので,熱対策としての効果としても程度の問題でしかないけれど。
熱対策に関連していうと,RAID はやめておいたほうがいいと思う。
ストライピングは RAID の範疇に入れるのも間違いだから論外として,データの保存を確実にしようとしてミラーリングをするのも,同じデータの保存のために2倍の数のハードディスクを必要とするため,熱問題を深刻にさせる。
1台のハードディスクを使っていれば壊れることもなかったのに,ミラーリングをしたためにハードディスク周辺が高温になり,2台とも壊れてしまった,などということさえ起こりうる。じっさい私は,ミラーリングして使用していた IBM の Deskstar 120GXP 80GB [IC35L080AVVA07] が,使用開始から1年足らずにして,相次いでおかしくなる,という経験をした。これは,ハードディスク個体の弱さもあったのだろうが,それ以来ともかく,IBM のハードディスク,7,200rpmのハードディスク,RAID運用という3つのものには,ペケをつけることにしている。
最後に,C.の方法だが,これを実行するのはそう簡単ではない。でも,けっこう本気で考えている。
[2005/01/09追記]
「はじめに >> 動画編集に使うパソコン(2005年編)>> 組立ての前に」の「システムディスクの変更」で書いたように,2004-2005 期新規導入マシンでは,上記冷却対策の A. の方法を採用した。
外付けハードディスクとして売られているものだと,中のハードディスクの選択肢は限られてしまうが,ハードディスクの外付けケースを利用すれば,好きなハードディスクを外付けにできるので,その点の問題はない。
費用の面も,その種のケースは USB 2.0/IEEE1394 両対応のタイプでも 5,000 円台からあるので,大きな障害とはならないだろう。
それにこれだと,ケーブルをつなぎ替えてリムーバブルディスクのように使うこともできる。お奨めしたい。
なお,ハードディスクの外付けケースは,USB 2.0 接続なら 3,000 円台からある。ただ,私はやはり IEEE1394 のほうがいいように思う。理論上の最大転送速度は USB 2.0 のほうが上だが,実際に出る速度は IEEE1394 のほうが上のようだし。
[2005/01/11追記]
なお,外付けハードディスクケースの選択は少し注意を要するようだ。
私は,値段の安さと見た目で,Princeton PEC-35IU を選んだ。しかしこれはやや危険な選択だったようだ。
最初,これだけを繋いで使っているときは気づかなかったのだが,これと,IEEE1394 接続の外付けチューナー/エンコーダとをデイジーチェーンで繋いで使おうとすると,片方しか認識されないなどの不審な挙動をすることに気づいた。あちこち検索してみると,この外付けケースに使われている変換チップ PL-3507(Prolific社製)は,さまざまな相性問題などで知られているものらしいことがわかった。
Princeton 社のサイトでファームウェア更新ソフトのダウンロードページを発見。変更内容は「Windows XP Service Pack 2 + VIAのIEEE1394 Host Chip環境で、IEEE1394接続したときのパフォーマンスの改善」とある。あまり関係なさそうにも見えたが,こう言いながらこっそりいろいろ直していることも多いので,とりあえず適用してみたところ,おかしな現象の発生は収まった。
というわけで事なきを得たのだが,購入前によく情報を集めておくべきだったと反省している。
[2005/01/16正午ごろ追記]
「やや危険な選択」だの「事なきを得た」だの,とんでもない!
上に書いたような現象は,前触れにすぎなかった。
あるとき気がつくと,このケースに入れたドライブが,全然読めなくなっていた。
ドライブは認識するのだが,「ファイルまたはディレクトリが壊れているため,読み取ることができません」というメッセージが出る。ドライブのプロパティは未フォーマット・容量 0 と表示されてしまう。
外付けケースから取り出し,内蔵ドライブとして接続してみても,旧マシンに接続してみても,同じことだった。
ファイナルデータ3.0 特別復元版の試供版をインストールして使ってみたところ,ファイルが検出されたので,データ領域は壊れていない可能性が高い。ブートセクタだけが壊れたのか。
このディスクにしか保存していないデータがあるので,諦めるわけにはいかず,製品版をダウンロード購入(税込 8,715 円。また出費。ああ!)して,昨日の夜からクラスタスキャンを実行中。いま19時間経過したところで,残り時間が約1時間20分と表示されている。
うまく復元できることをひたすら祈る。
[2005/01/16午後3時ごろ追記]
クラスタスキャンが完了した。20時間以上かかった。
ファイルの復元もできたようだ。今度こそ,事なきを得たと言ってよさそうだ。
さて,この外付けケース,どうしてやろうか。
Princeton にクレームしたいところだが,どうも,悪いのはこの製品だけではないらしい。Web上を回ってみると,大容量の IDE ハードディスクを変換チップで外付けにして使うは,かなり危険なものらしいことがわかる。それも,変換チップに PL-3507 を使ったものに限らないらしい。
たとえば,Hardware Analysis というサイトの掲示板の Prolific PL3507 firewire HD crash -- help needed. というスレッドには,3種類の IEEE1394 外付けケースで,同じくデータを飛ばした経験のある人が書き込みをしている。
彼のアドバイスに従い,私も当分のあいだ,IEEE1394 の外付けケースを使うのは 120 GB までのハードディスクにとどめておくことにしようと思う。
[2005/01/17追記]
いちおう Princeton のサポートにも問い合わせをしておいたら,今日メールが来た。かなり早い対応だ。好感をもった。
その問い合わせには,ハードディスクのデータが破損する前にパソコンを休止状態にしたことも書いておいた。そしたらメールには,「本製品はサスペンドからの復帰をサポートしておりません」と書かれていた。そんなこと外箱にも取扱説明書にも書いていないぞ。ちょっと好感度が下がった。
メールの中で,Windows XP の SP1 の場合,137 GB を超える容量の ATAPI (ATA Packet Interface) ハードディスクではスタンバイまたは休止状態に入った場合やメモリダンプの書き込みでハードディスクドライブが破壊される可能性があると記載したマイクロソフトのサポート情報ページに言及していた。これは有益な情報だ。というか,こんなとんでもない問題があっても,ただ「問題が確認されています」というだけで済まされてしまうものだろうか。疑問を禁じ得ない。
もっとも,そのページには,SP2 では問題は解決されていると記述されている。私の場合は SP2 だ。解決したと思ったが IEEE1394 接続の場合にはなお問題が残っているということか。
いずれにせよ,上に書いたように,IEEE1394 で使うハードディスクは,120 GB までにしておいたほうがよいだろう。そして,変換チップが PL-3507 の外付けケースは,使わないほうが身のためだというべきだろう。
OS の選択も非常に重要だ。
安定性と,4GBを超えるサイズのファイルも作れるNTFSファイルシステムが利用できることとから,Windows 2000 か Windows XP が必須である。Windows 98/Me でビデオ編集するのは,やめておいたほうがいい。きっと泣きを見る。
私は Windows 2000 を使っている。Windows XP での正式動作保証をしていない古いツールを使う場合もありうるので,これが一番と思っている。
ただ,D-VHS からキャプチャしようとすると,Windows XP が必須らしいので,そういうことまでしたい画質こだわり派の人は,Windows XP を選ぶべきだろう。
[2005/01/09追記]
「はじめに >> 動画編集に使うパソコン(2005年編)>> 部品選び・購入」の表に書いたように,2004-2005 新規導入マシンには,Windows XP SP2 をインストールした。
ハイパースレッディング対応の CPU を使うのだから,それに対応した OS である XP を選ぶのは当然として,安定動作重視の動画編集パソコンに古めのツールの動作にやや不安のある SP2 を入れたのはなぜか。
理由の一つは単純。SP1a 版より安かったからだ。
そしてもう一つは,今後は SP2 を前提とした(SP2 しか正式サポートしない)デバイスやソフトも出てくるようになり,それを使うには SP2 を入れなくてはならないようになることが確実と思われるからだ。いずれ入れなければならないなら,いま入れてしまおうということ。
上に断片的に書いたが,私の現在(2004年)の使用マシンは,次のような構成になっている。
ケース | ミドルタワーケース |
パワーサプライユニット | Antec TruePower 480 |
ドライブ |
[5インチベイ----上から順に]
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マザーボード | ASUS P2B-F(チップセットは Intel 440BX) |
CPU | Pentium III 800MHz |
メモリ | SDRAM 256MB × 2 |
拡張ボード |
[AGP]
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このマシンは,2002年1月に中古で購入して,構成を変更しつつ現在まで使ってきたもの。
以前の構成は,以下のページに記載してある。