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動画編集に使うパソコン(2005年編)

(2005年01月09日追加)

「はじめに >> 動画編集に使うパソコン(2004年編)」では,2004年時点での動画編集に最低必要なマシンスペックと,自分自身の使用マシンのことを書いた。
そこに書いたスペックで,とりあえずは支障なく編集ができた。

しかし,そのスペックでは,しだいに苦しくなってきた。新しく発表される,より使いやすいソフトの要求スペックを満たさないことが多くなってきた。
だからって,マシンを新しくしたのでは,「奴ら」の思うツボではないか。そう引き留める心の声が聞こえた。しかしそれを押さえつけ,ついに新機材を導入してしまった。2004年末から2005年初めにかけてのことだった。

[目次]


部品選び・購入

組立キットで自作

今回は自作を試みることにした。
価格の面ではメーカー製のほうが有利で,その点ではもう自作にアドバンテージはない。しかし,自作すれば,そのマシンは世界中の誰より自分がよく知っているものになる。ブラックボックスの部分が多いメーカー製パソコンを使うより,イライラさせられることが少なくて済むだろう。ここが自作の最大のメリットだ。
それに,メーカー製パソコンを買うと,結局はメーカーにとって都合のいいマシンを使わされることになる。そうではなく,自分に必要な機能と品質のものを組めることの魅力は大きい。

そういうわけで,自作をすることにしたのだが,ビギナーなので謙虚に,ショップで売っている組立キットを買うことを検討した。
「それじゃあ完全に自由に組み合わせられるわけじゃないじゃないか」とおっしゃる向きもあろうかとは思いますが,あんまり自由すぎても,選べなくて困っちゃうこともありますし,まあいいでしょう。

動画編集パソコンは「実績」最優先

いくつかのショップの組立キットを検討してみて,結局,いつもパーツ購入にいちばんよく利用している BLESS さんのキットにした。BLESS さんの組立キットは,パーツのすべてについて,スペックだけじゃなくメーカーや型番がはっきり書いてあるのが嬉しい。

選んだのは,VIGOR シリーズの中にある,V4300SG というキットだ。このキットは,最新・最速の部品を組み合わせるというのではなくて,実績のある部品で安心して組み立てられることを重視しているのではないかと思う。 動画編集のためにパソコンにつなぐ各種の機器は,不安定な動作を招くことが多い。そうであれば,せめてパソコン本体は,可能な限り汎用的で安定動作してくれるものでないと困る。しかも,作るのは素人だ。こういうオーソドックスで全く面白みのないパーツ構成が最適なソリューションだといえよう。
ベース価格は 72,800 円(ネットだと 74,800 円のよう)だったが,いくつか仕様変更をし,また Windows XP も含めて,総額で 126,930 円になった(モニター別。マウス・キーボードも含まず)。

購入の前には,しばらくWeb上の店舗で検討をしたり,メールで在庫の問い合わせをしたりした。しかしやはり現物を見たり即時に在庫確認をしたりしたいな,と思い,忘年会も一段落した12月17日の会社帰りに店に行って,そこで購入を決めた。この手のものは最後は店で買うのがいいようだ。Web で買うより,パーツ変更の自由度も高いようだったし。

パーツ構成

さて,そのときに選んだパーツと仕様,それをWebで BLESS さんで個別に買った場合の価格は,次のとおり。

部品 仕様 価格
ケース サイズ(Scythe) SCY-4292B-400
ATXフォームファクタで,400W電源付き。見た目もそこそこ格好いいブラックモデル。
マザーボード用のプレートを取り外すことができない,右側の側板も取り付けづらいなど,ヘビーな自作派はイライラするかも。作りもそれほど綺麗に仕上がってはいない。
しかし,ハードディスクの取り付けなどはやりやすく,見た目だけじゃなく意外に使えるケース。
9,980
ケースファン サイズ(Schthe) 鎌風の風120
12cmファン。ファンコントローラ付き。
説明書が一切ないので戸惑った。
1,080
マザーボード AOpen AX4SG-UL
Intel 865G を搭載した,実績の多いマザーボード。チップセットはインテル 865G。
Northwood のための設計だが,Prescott も 3.20E GHz までなら対応。
S-ATA のハードディスクもサポートしている。マザーボードによっては IDE(P-ATA)との混在は不可,というものもあるけれど,これは大丈夫のようだ。今のところは S-ATA をつなげる予定はないが,そのうち役立つだろう。
10,500
CPU Intel Pentium 4 3.20C GHz
Northwood コア。より新しい Prescott コアの同じ周波数のもののほうが安かったのだが,Prescott は消費電力が大きいことと,マザーボードが最初からターゲットにしていたものを搭載したほうが安定するのではないかと思ってこちらにした。
25,900
メモリ Apacer DDR400-512M × 2
PC3200/DDR/CL3/ECC無。
あまり知らないメーカーだったが,SAMSUNG のチップを使い,「永久保証」を謳うので,悪くないものなのかも。BLESS さんでは,推奨メモリだった。
512 MB が2つだから,1GB だ。メモリは 512 MB もあれば動画編集にも十分だと思うが,ちょっと奢ってみた。
17,960
フロッピーディスク・ドライブ IMATION FG-FD INT2B
フロッピーとUSB2.0接続カードリーダが一緒になったドライブ。
ケースに合わせてブラックモデル。
4,809
ハードディスク・ドライブ(その1:システムファイル用) Maxtor 5A250J0 (MaXLine II)
250GB/ATA133/毎秒5400回転/バッファ2MB。
何より耐久性重視でチョイス(ただし後に,システム用には別のハードディスクを用意する方針に変え,これは外付け用に回す)。
13,990
ハードディスク・ドライブ(その2:データファイル用) Maxtor 5A250J0 (MaXLine II)
上と同じく,耐久性重視でチョイス(こちらは予定どおりデータファイル用に)。
13,990
光学系ドライブ I-O DATA DVR-ABH16W
DVD-R 書込8倍速,DVD+R 書込 16倍速(2層 2.4倍速),DVD±RW 書込4倍速,DVD-RAM 書込5倍速に対応のスーパーマルチドライブ。
日立LG製 GSA-4160B のOEM製品。同じ GSA-4160B のバルク製品は半分くらいの値段で買えるが,OEM である こちらの製品のほうが作りがよいという風評に影響されて,これを選択した。
14,500
オペレーティング・システム Windows XP SP2
ハードディスクとセットの OEM 版。
16,800
129,509

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組立ての前に

パーツ到着

パーツを購入したのは閉店時間の8時ぎりぎりだったので即日発送というわけにはいかなかったが,翌日発送で翌々日の19日午後1時過ぎに到着した。
速いね。これも,在庫確認をその場でやったうえで購入したからこそだろう。Webで注文したのではこうはいかなかったと思う。

[届いたパーツ一式の写真] [ケースの中の写真]

この日は,まだ組立てには取りかからず,箱を開けるだけにした。
日曜の午後から組み立て始めたりしたら,トラブルがあったときなど,月曜まで尾を引いてしまいかねない。

参考にした本

組み立てる代わりにこの日は,図書館から借りてきた本を眺めながら,マシン構成をもう一度検討した。
参考にした本は次のとおり。

丹治佐一『自作パソコン/ベアボーン/PCキット 完全マニュアル』(2003.09,ディー・アート,303頁,本体1,800円)
格安のPCキットを買って実際に組み立ててみる,その後それを拡張する,という筋立てが柱になっている。そこに時折,小型ベアボーンの場合はこうで,こういう場合はこうで,という話が加わるという構成。
情報量は今回参考にした本の中では最も多い。
ただし,日本語にやや難がある。
福多利夫『「はじめて」から「最速・最強」まで 目的別自作パソコンパーフェクトマニュアル(2004.02,翔泳社,229頁,本体1,900円)
組立作業の解説部分はすべてカラーで,わかりやすい。実際の作業時に横においておくならこれがいいか。
また,パーツ選びも無難な線でまとめるというタイプのようなので,指向の似ている私には参考になる。ただし,あまり詳しくはない。
湯浅英夫『挑戦すれば必ずできる 自作パソコン完全組み立てガイド』(2004.08,技術評論社,246頁,本体1,780円)
パーツを必須部品とオプション部品に分けて説明していたり,全部組み立ててしまう前に最小限のパーツ構成の段階で動作チェックをすることを推奨していたり,と,自作のときに陥りやすいワナへの配慮がある感じ。
作業の時に参照するというよりは,あらかじめ通して読んでおいたほうがいい本というところか。

システムディスクの変更

読みながら考えているうちに,システムディスクは,もっと速くて薄い,DiamondMax Plus 8 にしたほうがよいように思えてきた。
システムディスクにそんなに大容量は要らない。堅牢さが大事だ。シングルヘッド/シングルプラッタ構成のこのラインナップが最適のように思える。回転数 7,200 rpm のディスクは熱が心配なのだが,この薄さなら熱も逃がしやすいし大丈夫だろう。

動画を編集するなら,システムディスク以外のディスクを2台用意して,1台からデータを読み出し,もう1台にデータを書き込むようにするのがいい。システムディスク用に用意した MaXline II を転用してもう1台のデータディスクにすれば,そういう作業体制になる。
それも,IEEE1394の外付けケースに入れて,外付けハードディスクにすれば,超大容量・高速のリムーバブルディスクみたいなもので,旧マシンとのあいだのデータ交換にも便利。理想的な構成だ。

ただし,これでさらに出費がかさんだ点は,理想的ではなかった。
DiamondMax Plus 8 ( 40 GB の 6E040L0 )が 5,490 円,IEEE1394 の外付けケース,Princeton PEC-35IU が 5,773 円,IEEE1394 の PCI カード,SYBA SD-FW72874-3I が 1,980 円。

[2005/01/16追記]
PEC-35IU の利用には注意が必要(商品説明ではビッグドライブ対応となっているが,ビッグドライブは入れないほうがいい)。
顛末は,「はじめに >> 動画編集に使うパソコン(2004年編)>> ハードディスク」の「外付けの大容量ハードディスクの利用には注意が必要」を参照。

工具など

組立ては基本的にはプラスドライバー一本でできる。
それくらいは持っているので,工具を買う必要はなかったが,上に挙げた本によると,先端がマグネットになっているドライバーと,ラジオペンチ,除電手袋があると便利とのことなので,組立予定前日の22日,それらを購入した。
このほか,細身で明るい懐中電灯があったほうがいいとも書かれていたが,家にある大型懐中電灯で間に合わせた。しかし,作業してみると,たしかに細身のもののほうがずっと便利なことに気づくことになる。


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組立て

CPUクーラーの取り付けには注意!

満を持して,組立てに取りかかる。12月23日。天皇誕生日でお休みだ。この日だけ,天皇に感謝する。

組立てのやり方は,マザーボードに付属する組立マニュアルでもだいたいわかるし,本もあるので,迷うところはほとんどない。
これまで使っていたパソコンも,人が自作したものを譲り受けたあと,パーツをほとんど全部入れ替えて使っていたから,今回初めてやるのはマザーボードの取り付けとマザーボードへの各種コネクタの取り付けくらいのものだったので,楽だった。
その日の終わりまでには,OSのインストールまで一通り終わった。

ただ,一つミスをした。
それは,CPUクーラーを取り付けようとして,力まかせにやってしまい,クーラーを壊してしまったこと。

パッケージ版の Pentium 4 に同梱されているCPUクーラーは,リテンションメカニズムの4隅のフックをマザーボードのリテンション台のホールに引っ掛けた後,2本のリテンションロック((a) のレバー)を押し倒すことによって固定することになっている。
この押し倒し方が要注意なのだった
湯浅氏の本には,「かなり強い力を必要とするので注意深くレバーを扱ってください」とある。この作業について注意を喚起しているという点は他書にない優れた点だ。しかし結局のところ,これでは何をどう注意すればよいのかはわからない。
「強い力が要るわけね。よしよし,強い力でいくぞー」とやっているうちに,バキッと音がして,リテンションロックを支える部分が折れてしまった( (b) )のだった。

[壊れた CPU クーラーの写真]

こうなると,ロックがかからない。つまり,使えない。
池袋のビックパソコン館に走り,CPUクーラーを買う羽目となった。
クーラーマスターのシプラム(Cyprum) を選択した。また出費だ。今度は 4,080 円! もっと安いのもあったが,冷却は大事なポイントなので,仕組みに詳しくない私としては定評のあるものを買うしかない。
「お金は余計にかかったけれど,付属のクーラーより性能のいいものに換えたわけだし,無駄ではなかった」と思うことにする。

シプラムの取付用クリップは金属製で頑丈だったので,力を込めすぎて壊すこともなく,無事に取り付けができた。
しかし,あれはどうやってはずすんだろう? 私には永遠にできないそうにない。

結論。パソコン自作のポイントは CPU クーラーの取り付けにあり。

モニター・スピーカー・マウス・キーボードは旧マシンと兼用

さて,新マシン完成後も,旧マシンはしばらく使うつもりでいる。
机の周りのスペースは,そう広くはないので,モニターを2台も置くスペースはない。キーボードだって同じことだ。

それらを2台のマシンで共有するための切換器を探していたら,ありましたよ,ピッタリなのが。
株式会社ナカガワメタルの CPU 自動切換器,NK-KVMA-M2 だ。

これは便利。2台のパソコンでモニター・スピーカー・マウス・キーボードが共有できて,どちらのパソコンを操作しモニターに表示するのかをマウス操作またはキーボード操作で切り替えることができる。
クレバリーさんで購入。4,723 円の価値は十分ある。


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スペックの違いは体感できるか

こうして組み立てたパソコン。
旧マシンとどれくらい能力が違うのだろうか。

正確な検証はまだだが,一言で言って,

全然違う!

CPU の動作周波数だけでも 800 MHz から 3.2 GHz へと4倍になったのだから,それも当然だろう。
まず,AVI ファイルから MPEG 2 ファイルへのエンコードは,これにほぼ正比例して速度が4倍くらいになったように思う。
それに対し,MPEG 2 から DVD-Video を作る作業は,2倍くらいしか速度向上していない感じ。

効果を何より感じるのは,TMPGEnc DVD Author など各種ソフトのプレビュー機能を使うときに,無理がなくなったこと。
今までは音声を再生させながら編集ポイントを探すのは無理があって,音声を再生しないソフトを使うか,音声を切ってプレビューしたりしていた。
また,早送り・巻き戻しや,シークバーで移動するのも,スムーズではなく,行きたい地点になかなか辿り着けなかった。
これは相当ストレスのかかる作業だった。
そんな必要がなくなったのは大きい。

プロフェッショナルな技術を持っている人なら,プレビュー機能がスムーズでなくても的確に一発で編集ポイントに到達できるだろうから,800 MHz くらいのマシンでも差し支えないかもしれないが,私を含め素人は,このくらいのマシンを使った方がよさそうだ。
今回の自作では,CPU をちょっと奢りすぎたと思う。2.4 GHz の Cerelon くらいで十分だったかもしれない。メモリもちょっと不必要に多い。このあたりを削れば,本体だけなら10万円を切ることは簡単だろう。

上のようなことでストレスを感じているようならば,アップグレードをお勧めする。

速度向上については,数字で検証できたらまたあとで追記しようと思う。


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