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Thinkpad X31 のハードディスクを 換装し DtoD 区画(HPA)を復元する

(新規作成 2008/08/31。09/06 ひとまず Fix)

[目次]


Thinkpad X31 を入手

ノートパソコンはこれまでずっと Let's note を通してきたが,CF-B5 ER は,メモリが 192 MB しかないこともあって,さすがに動作にイライラさせられるようになった。
かといって,トラックボールでなくなった最近の Let's note には食指が動かない。

そこで,Thinkpad に鞍替えすることにした。

5 月 26日,ヤフオクで X31(2672-LJ6)を落札。43,500 円。
これは,2004 年 12 月 1 日に発表された,X31 シリーズの最後のモデルである。CPU は Pentium M 1.7 GHz。
発表の翌日の PC Watch の記事を読むと,最上位機種は 2672-LJ7 だが,それとの違いは,LJ7 のハードディスク容量が 80GB であるのに対し LJ6 が 40 GB である,ということだけのようだ。

X31 シリーズの完成形,と呼んでもいいだろう。
4年近く前の機種ではあるが,2672-LJ6 の製品仕様を見ると,現在でも,不満を感じるところはほとんどない。

しばらく使ってみても,ポインティング・スティック(IBM では「トラックポイント」と呼ぶ)にはあまり馴染めないが,全体としては,なかなかに満足。

しかし,40 GB のハードディスク容量だけが,ちょっと手狭に感じられる。80GB のモデルが存在したという事実が,その感を一層強くさせる。
それに,どこもいじらないままでは気持ちが悪い気もして,ハードディスクの換装を検討し始めた。



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用意したもの

新しいハードディスク
8 月 30 日,ゲリラ豪雨の合間に秋葉原の BLESS に行って,HGST HTS541616J9AT00 を購入した。5,980 円。
160 GB の 2.5 インチハードディスクが 6,000 円もしないのか,と驚いて,換装の決意を固めた。
ハードディスクのコピーツール,パーティション管理ツール
アーク情報システムの HD 革命 Copy Drive Pro 2.5 を同日池袋ビックパソコン館にて購入。
このパッケージは,ディスクコピーツールである「 HD 革命 Copy Drive 2.5」にパーティション管理ツール「 HD 革命 Partition Lite 1」がセットになっているので,お買い得といえる。
アカデミックパックが 3,880 円。この日の池袋ビックパソコン館はちょうどアーク情報システムのキャンペーン期間で,500 円分のクオカードももらえた。
USB 接続の 2.5 インチハードディスク用外付けケース
ずっと以前(2005 年 4 月)に買って使わなくなっていた novac の 2.5”HDDはい〜るKIT があったのでそれを利用。
起動用フロッピーディスクと外付けフロッピードライブ
DOS 環境で起動することの必要な場面があるので。
以前に Windows 98 を使っていた頃に作った起動用ディスクを利用。
また,落札した Thinkpad X31 には純正フロッピードライブが付いていた。


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作業の概要

通常の領域はディスクコピーツールでできる

普通のハードディスク換装なら,新ハードディスクへのコピーは簡単だ。
USB 外付けケースに新ディスクを入れ,ディスクコピーツールを使って現ディスクの中身を丸ごと新ディスクにコピーした後,現ディスクを本体からはずして新ディスクを本体に入れればいい。

「 HD 革命 Copy Drive 」なら,隠し領域まで含めて丸ごとコピーがとれる。

DtoD 区画は fwbackup.exe で吸い出し fwrestor.exe でリストアする

しかし,Thinkpad X31 では,システムのリカバリーに使うプログラムが収められた領域(ハードディスクに格納されている領域からハードディスクをリカバリーするので,Disk to Disk などという。以下では「 DtoD 区画」と略称する)は,そうしたコピーツールではコピーできない。

X31 の DtoD 区画は,HPA(Hidden Protected Area)という領域に収められている。
HPA は,単なる隠し領域ではなくて,BIOS レベルで保護されている領域だから,Windows からは見えない。Windows 上で動くコピーツールには,その存在を認識できないのだ。
同じ Thinkpad でも,X30 の DtoD 区画 は単なる隠し領域に収められているらしいが,それとは事情が違うわけだ。

DtoD 区画はリカバリーに必要なだけなので,通常の領域さえ丸ごとコピーすれば,日常的には問題なく使用できる。
しかし,リカバリーが必要になるかもしれないので,DtoD 区画もコピーしておきたい。

DtoD 区画を新ディスクにコピーするには,DtoD 区画内にある fwbackup.exe(DtoD 区画イメージの吸い出しプログラム)fwrestor.exe(DtoD 区画復元プログラム)という2つのプログラムを使う必要がある。
その手順の概要は,次のようになる。

  1. 現ディスク内に FAT32 領域を作る
    Thinkpad のハードディスクは出荷時に NTFS でフォーマットされている。DtoD 区画の復元に使う fwrestor.exe は DOS 環境上で動くものなので,NTFS 領域を認識できない。
    そのため,認識可能な FAT32 領域をまず作成する。
  2. FAT32 領域に fwbackup.exe とfwrestor.exe をコピーする
  3. fwbackup.exe を使って FAT32 領域に DtoD 区画のイメージを吸い出す
  4. 現ディスクを新ディスクに丸ごとコピーする
    ただし,これでは DtoD 区画はコピーされない。
  5. 新旧ディスクを入れ替える
  6. fwrestor.exe を実行して,DtoD 区画を復元する


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具体的手順

私がおこなったやり方は次のとおり。

(1) 現ディスクへの FAT32 領域の作成

出荷時の X31 は約 33 GB の容量(ディスクは物理的には約 37 GB〔カタログ値は 40 GB だが,2進法計算に基づく表記ではこうなる〕 の容量があるが,DtoD 区画で 4 GB くらい使われている)全部が1つのパーティションになっており,NTFS でフォーマットされている。
そこに,データを消さずに FAT32 の新たな領域を作成しなければならない。

これは,パーティション管理ツールを使えば難なくできる。
私は,「HD 革命 Partition Lite 1 」を使って,5 GB の FAT32 の領域を作成した。

(2) fwbackup.exe とfwrestor.exe を FAT32 領域にコピー

この作業は,DtoD 区画が見える状態でないとできない。Windows が起動してしまっては認識できない。
DtoD 区画を認識できるのは,リカバリープログラムだけ。
だから,この作業は,リカバリープログラムを開始して,リカバリーの過程を途中で降りて行う。具体的には,次のようにする。

  1. 起動時に Access IBM ボタンを押す
    Access IBM Predesktop Area に入ります。
  2. Recover to factory contents(工場出荷時への復帰)をダブルクリックする
    IBM Product Recovery プログラムが起動し,メインメニューが表示されます。
    ここで[Enter]キーを押すとリカバリーに進んでしまいますので押さないように。
  3. [F3]キーを押す
    リカバリープログラムがメモリ上の仮想ドライブ(a:)で起動したまま,リカバリーが中断します。
    このとき,(1) で作成した FAT32 領域が第1パーティション(c:),DtoD 区画が第2パーティション(d:)として認識されるようです。
    そして,次のようなプロンプトが表示されます。
    D:\RECOVERY>
    	
  4. fwbackup.exe と fwrestor.exe を FAT32 領域にコピーする
    リカバリープログラムは基本的には DOS なので,DOS の copy コマンドが使えます。
    コピーするこの2つのプログラムは,仮想ドライブ(a:)の recovery フォルダに入っているので,ファイル名をフルパスで指定して,FAT32 領域(c:)にコピーします。
    copy a:¥recovery¥fwbackup.exe c:¥
    copy a:¥recovery¥fwrestor.exe c:¥
    

(3) DtoD 区画のイメージファイルを FAT32 領域に吸い出す

fwbackup.exe を実行して,イメージファイルを吸い出す。
イメージファイルのファイル名は何としてもよいのだと思うが,参考にしたサイト(X31 - ThinkPad X60s/X40/X31 メモ)の記述にならい,imgset という名前にした。 吸い出す際には,1ファイルあたりの最大サイズを指定しなければならない。640 MB の CD-R に焼いて保存しておくことを考えた場合には,620 くらいを指定する。

fwbackup file=c:¥imgset size=620

こうすると,634,881 KB のファイル6つ(IMGSET.001 〜 IMGSET.006)と174,432 KB のファイル1つ(IMGSET.007)が FAT32 領域内に出来上がる。

(4) 全体を新ディスクへ丸ごとコピー

新ディスクの HGST HTS541616J9AT00(容量約 149 GB〔カタログ容量でいえば 160 GB〕)を 外付けケースに入れてつなぎ,「HD 革命 Copy Drive 2.5 」を使って,丸ごとコピーする。

DtoD 区画(HPA)はコピーされず,33 GB 分がコピーされ,残る約 116 GB は未割り当ての状態となる。

(5) ハードディスクを入れ替える

左が現ディスク,HGST HTS548040M9AT00(2005 年 2 月 10 日タイ製)。いわゆる Travelstar 5K80 シリーズ の 40 GB モデル。
右の新ディスクが HGST HTS541616J9AT00(2008 年 8 月タイ製)。こちらはTravelstar 5K160 シリーズの 160 GB モデル。 データシートによると,回転速度はともに 5400 rpm だが,1 平方インチあたりの面記憶密度が向上( 70 Gb から 131.5 Gb へ)したためアクセス速度も向上しているようだ。
しかも消費電力は低下( Read/Write 時で,2.5 W から 1.8 W へ)しているというから,ありがたい。

(6) DtoD 区画を復元する

DOS の起動フロッピーから起動し,FAT 32 領域(c:)内にある fwrestor.exe を実行する。

c:¥fwrestor file=c:¥imgset

しばらく経つと,復元が完了する。
未割り当て領域のうち 4 GB くらいが DtoD 区画(HPA)になる。

復元作業終了。

(7) 残りの未割り当て領域にパーティション作成

Windows XP を起動し Windows の管理ツールの[ディスクの管理]でハードディスクの現状を見ると,NTFS 領域 28 GB,FAT32 領域 5 GB,未割り当て領域 112 GB くらいになっている。
この未割り当て領域にパーティションを作成する。

ぜひ,(7) より前に (6) の作業をすること。ハードディスクに未割り当て領域がない状態で DtoD 区画の復元をすると,割り当て済みのパーティションが壊れて面倒なことになってしまうようだ(というか,実際,一度そうなった)

DtoD 区画のための未割り当て部分を残しておけばパーティション作成を先にやってもいいが,それでは,正確にどれだけ残しておけばよいかわからないので無駄が出る。
復元をして可視領域のサイズを確定したあとでパーティション作成・変更をしたほうがよい。



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